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概要

KentaiNEWSvol210

石井直方いしい・なおかた●昭和30年東京都生まれ/ボディビル1981・1983年ミスター日本優勝、1982年IFBBミスターアジア優勝/現在東京大学大学院教授(運動生理学、トレーニング科学)、理学博士08筋力トレーニング(筋トレ)に関する講演でよく質問され、回答にやや苦戦する問題に「オーバートレーニング」に関するものがあります。トレーニング処方では「同じ筋群のトレーニングは1回3?6セット、週2?3回行うのが原則」です。この原則はそれなりの研究データに基づいてはいますが、「1回の量を少なくして毎日やってはだめなのか?」、「歳をとってきたら量や頻度を落とす方がよいのか?」、「そもそもやり過ぎはなぜいけないのか?」などと質問されると、一言では答えられません。そこで今回と次回にわたり、筋トレにおけるオーバートレーニングについて整理してみようと思います。オーバートレーニングとはオーバートレーニングとは、「トレーニングを重ねるほど、筋力や全身持久力などの体力レベルが低下してくる」ことをいいます。どちらかというと、トレーニング量の多い持久系のスポーツでよく問題になります。オーバートレーニングにおちいると、回復に時間がかかる上、回復のための休養によって練習不足になるという問題も生じるからです。そのため、オーバートレーニングの兆候を早期に発見する目的で、慢性的な疲労感・倦怠感などをモニタリングしたり、血中のストレスホルモン(コルチゾールなど)の濃度を定期的に測ったりすることも行われます。一方、筋トレでは、そこまでオーバートレーニングが深刻になることはなく、「ハードなトレーニングを続けているのに、思うように効果が上がらない。やり過ぎなのでは?」というような問題が主のようです。もちろん、これはこれで重要な問題です。反対に、「オーバートレーニングを都合のよい言い訳にして、トレーニング不足になっている」という場合も多いのではと思います。「筋を壊して作り替える」という幻想筋トレの現場でオーバートレーニングが顕著に現れない理由は2つあると思います。ひとつはトレーニングの性質によるものです。筋トレの場合、負荷強度が高いため、筋の疲労が回復していないと「前回上がった負荷が同じように上がらない」ことになります。その結果、トレーニングの質が自然に低下するという「自動補正」がすぐにはたらくと考えられます。2つめは、「筋トレは筋肉を破壊して作り替えるもの」という一般認識でしょう。これは、運動によって骨が強化される仕組みと、次に述べる「伸張性収縮による筋の微小損傷」という現象が合体してできた、ある種の幻想といえます。私の研究グループで行ってきた多数の実験からも、通常のトレーニングでは、細胞膜の機能障害のような「ミクロな損傷」は生じても、細胞の構造が壊れるというような、目に見える損傷はほとんど生じないといえます。109?オーバートレーニングの意味とその個人差筋トレにおける「オーバートレーニング」