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概要

KentaiNEWSvol209

13ベンチプレスのパフォーマンスと解剖学今回は上体の筋について考えましょう。上体の筋の象徴的な存在は、大胸筋です。大胸筋は大きな筋で、鎖骨部、胸肋部、腹部に分けられ、起始はそれぞれ鎖骨の内側半分、胸骨および第1から第6肋軟骨、腹直筋鞘前葉、停止は上腕骨です。起始が分かれていることから、一つのエクササイズで、全体を鍛えることは難しい一方、上体を使う競技において重要な役割をになっています。働きとしては、肩関節の内転、屈曲、内旋を行います。上体のエクササイズを行うと、多くの場合肩関節が関与します。肩関節のなかで最も大きな外転筋が三角筋です。三角筋も起始の違いによって、鎖骨部、肩峰部、肩甲棘部に分けられます。ベンチプレスの動作には多くの筋が作用しており、手幅やフォームによってどの筋、どの部分が使われるかは異なってき節を補強しているインナーマッスルとして棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋があります。肩関節は可動範囲が大きいにもかかわらず、関節窩が浅いため安定性が低いです。今回は、表層の筋に注目してきましたが、スタビライザーの機能を果たす、インナーマッスルを解剖学的に理解し、鍛えることも重要です。ます。パワーリフターのように大きなアーチを作ったベンチプレスでは、ディクラインベンチプレスの状態を作っているといえ(写真1)、それは三角筋をメインとした肩の筋肉の関与を減らしています。肩の筋肉はその大きさから、大胸筋よりも弱いため、ベンチプレスでは三角筋や上腕三頭筋が制限因子になっていることが多いのです。その点で、肩の関与を減らしたフォームは理にかなっているといえるでしょう。ディクラインベンチプレスが、高重量を扱えるのは、拳上距離の短さだけでなく、解剖学的な要因もあるのです。また最近パワーリフティングにおいては、極限の柔軟性を持った選手や上体が過度に発達した選手が現れ、胸部にバーベルがついたときに、頭の方から水平にフォームを見ると、そのポジションでも肘が肩よりも下がらないフォームになっています(臀部はベンチ台にしっかりついています)(写真2)。このようなフォームを習得した選手は、世界が驚くような数字を挙げています。これは、パワーリフティングフォームによって、ディクライン状態をフラットベンチの上で作っているといえます。上体のエクササイズのヴァリエーションと効果ディップスも三角筋鎖骨部に加えて、大胸筋の腹部を鍛えるのに適しているエクササイズです。大胸筋の腹部を鍛えるためには、上体の前傾姿勢と、肩関節の屈曲を保って繰り返すことが必要です。一方、インクラインベンチプレス(写真3)は、大胸筋に加えて、肩の関与が大きくなるため、扱える重量が限られてきます。大胸筋の鎖骨部を集中的に鍛えるのに適しているといえます。ケーブルクロスオーバーで動作の角度を変えて行うのも大胸筋全体を鍛えるという点で意味があるといえます。またケーブルクロスオーバーは、動作範囲を広くとれるので、大胸筋のストレッチのポジションから、最大収縮まで行うことができます。これがベンチプレスと異なる点です。特に、収縮のポジションについては、ベンチプレスでは達成できないポジションを作れます。ケーブルクロスオーバーに似た種目として、ダンベルフライがあります。バリエーションとして、インラインフライ、ディクラインフライがあります。ケーブルクロスオーバーは収縮のポジションで負荷がかかるのに対して、ダンベルフライは、重力の関係で、収縮のポジションではほとんど負荷はかかりません。ただし、ストレッチのポジションで最大の負荷がかかります。ダンベルプレスは、ケーブルクロスオーバーほど大きな可動範囲をとれませんが、ベンチプレスより大きいといえます。それは、バーベルよりダンベルの方が動きの自由度が高いためです。三角筋鎖骨部は大胸筋のトレーニングの際に同時に鍛えられる場合が多いのですが、肩峰部については、サイドレイズなど大胸筋のトレーニングとは別に、外転動作を行うべきです。三角筋は、肩関節の表層の筋で、肩関Berglund Eddie選手〔スウェーデン出身〕1995生19歳一般男子66kg級世界記録保持者ノーギア188kg(写真1)(写真2)ディクラインベンチプレス(写真3)(写真4)インクラインベンチプレスベーシックトレーニングトップアスリートによるビギナーのためのVol.27中井敬子(なかいけいこ)●東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了/健康運動指導士/2010年世界パワーリフティング選手権大会女子52kg級8位大胸筋の効果的なエクササイズ