ブックタイトルKentaiNEWSvol207

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概要

KentaiNEWSvol207

石井直方いしい・なおかた●昭和30年東京都生まれ/ボディビル1981・1983年ミスター日本優勝、1982年IFBBミスターアジア優勝/現在東京大学大学院教授(運動生理学、トレーニング科学)、理学博士?アナボリック・ステロイドと筋メモリー?今年度から、日本ボディビル連盟が「日本ボディビル・フィットネス連盟」へと改称し、新たなスタートを切りました。この新名称は、ボディビル競技の発展に加え、これまで以上に健康づくりとしての筋力トレーニングの普及をはかるという方向性を明示したものといえます。一方、こうした方向性が真に社会に認められるためには、未だ後を絶たないドーピングの問題を根絶する必要があるでしょう。そこで、今回と次回にわたり、ドーピングに関連した最近の研究を中心に紹介します。ドーピング違反のペナルティーが2年から4年に国際アンチドーピング機構(WADA)の規定では、ドーピング違反を初めて行った選手や指導者に対する資格停止期間が、2015年以降は原則2年から4年に延長されます。すべての違反に対してというわけではありませんが、アナボリック・ステロイド(タンパク同化ホルモン)などのホルモン剤の使用についてはこの原則があてはめられます。選手にとっては、4年間の出場停止は致命的とも考えられますので、この改定のドーピング抑止効果はかなり大きいと思います。一方、この程度の出場停止ではまだ甘く、ナチュラルな選手にとってアンフェアではないかということも考えられます。最近の研究から、アナボリック・ステロイドのドーピングを一定期間行うと、それが「筋メモリー」として数年間にわたって「記憶」され、たとえドーピングを止めていても、トレーニングによって筋が肥大しやすい状態が持続する可能性が示されたからです。筋メモリーとは?「筋メモリー」については、これまで2回ほど紹介したと思いますので、要点のみまとめておきます。トレーニングによる筋肥大には、?筋線維内のタンパク質合成の活性化、?タンパク質分解の抑制、?筋線維の幹細胞である筋サテライト細胞の増殖、の3つの過程が関与しています。このうち、?で増殖した筋サテライト細胞は、近接する筋線維に融合し、その結果、筋線維の核数(筋核数)が増加します。こうして筋核数が増加することは、筋線維の肥大に必須であるとする説と、必ずしも必須の条件ではないとする説がありますが、私たちの研究グループの研究結果は現在のところ後者の方を支持しています。しかし、ある一定限度を超えて筋が肥大した場合には、筋線維が大きく肥大すると同時に筋核数も増えるようです。一旦増加した筋核数は、その後に筋を不活動にして萎縮させてしまっても、しばらく保持されますので、トレーニングを再開すればすぐに筋は肥大すると考えられます。このように、筋が過去のトレーニング効果を「記憶」していて、肥大しやすい状態を維持していることを106筋肉はドーピングも「記憶」している08