Kentai BLOG

レジスタンストレーニングの適切な頻度

トレーニングをプログラムする場合、最も難しい問題はおそらく「トレーニングの頻度」でしょう。
古くから、同一部位のトレーニングは週2~3回がよいというのが定説となっています。
この頻度は、一定の効果を得るために、確かに経験上「安全」な頻度といえますが、あまりに固定
観念化していて、「週1回では効果がない」と信じている人がほとんどのようです。
しかし、実際には、この頻度が最適であることを示す実験的根拠はあまりありません。
そこで今回は、この頻度の問題について再考してみましょう。

筋疲労とその回復過程
効果的なトレーニングを行うと、必然的に疲労が生じます。
レジスタンストレーニングでは、この疲労は一時的な筋力低下となって現れ、ゆっくりと回復しま
す。
疲労が回復するに従い、やがて筋力が以前のレベルを超える時期が現れ、これを「超回復」と呼
びます。
簡単に分かるように、「超回復」期に次のトレーニングを行えば、次第に筋力は増加していくことに
なります。
しかし、こうした疲労と回復の関係は、あくまでも「概念」であって、何日後、何時間後に「超回復」
が訪れ、それがどのくらい持続するのかよく分かっていません。
実際には、これらのことこそが、トレーニングを行う上では最も重要な情報になります。

一般的なトレーニングによる疲労とその回復
Hakkinen(1995)は、トレーニング経験のない女性(平均年齢30歳)に、レッグプレス(負荷10R
M)を5セット行わせ、その直後から膝伸展筋力を経時的に測定しました。
トレーニング直後では、筋力は平均約80%に低下しましたが、1時間後にはすでに約90%に、2
日後に約95%にまで回復しました。
これ以降測定は行っていませんが、おそらく4日後には100%に戻るか、微小な「超回復」が現れ
るものと思われます。
この実験だけを見れば、脚筋群のトレーニング頻度は「中3日」すなわち2回/週が適切となりま
す。

エキセントリックトレーニングによる疲労とその回復
しかし、何度かお話しした通り、筋疲労の発現のしかたは、トレーニング動作に強く依存します。
私たちの研究では、肘屈筋に伸張性最大筋力を発揮させるようなエキセントリックトレーニングを
8回×2セット行うと、1日後に筋力が約65%にまで低下し、その後「遅発性筋痛」を伴う疲労が持
続するため、10日後でも90%までにしか回復しませんでした。
横浜市大の野坂氏らによれば、同様のトレーニング後、さらに長期にわたって筋力を測定すると、
約1カ月後になって、やっとわずかな「超回復」が見られるとのことです。
したがって、いわゆる「ネガティブワーク」を多用するようなタイプのトレーニングでは、その頻度を
2~3回/週より低く設定しなければならないことになります。

疲労回復速度にもトレーニング効果がある
ところが、上述のようなエキセントリックトレーニングを2回、3回と続けていくうちに、回復時間が
徐々に短縮し、6日ほどで完全に回復するようになります。
すなわち、回復速度自体にもトレーニング効果があることになります。
さらに、野坂氏の最近の報告によれば、高強度のエキセントリックトレーニングを行う数日前に、
予めごく軽いエキセントリックトレーニングを行い、筋を「慣らして」おくと、高強度のトレーニング後
の疲労回復速度が著しく高くなるということです。
これらは、トレーニング後の回復速度が、トレーニングの履歴に依存することを示しています。
すなわち、あらゆる場合に用いることのできる、唯一の最適頻度というものは存在しないことにな
ります。

長期的トレーニング効果からみた頻度
トレーニンクを長期間続けた場合の、頻度と効果の関係はどうでしょうか?
上記のような高強度のエキセントリックトレーニングを、多少無理をして2回/週の頻度で続ける
と、約2カ月後まではオーバートレーニングの兆候が続きますが、3カ月後になると急俊なトレー
ニング効果が現れます。
こうした効果は、1回のトレーニング後の回復過程からは予測できないものです。
このように、「あえてオーバートレーニング気味の状態を作り、そのリバウンドを利用する」ような方
法は、しばしばアスリートの間で用いられますが、一歩誤ると「ミスコンディショニング」に陥る危険
性があるでしょう。
より一般的なトレーニングの場合については、Pollockらのグループが、腹筋群や脊柱起立筋な
どの体幹の筋群について、さまざまな頻度で3カ月間トレーニングを行った場合の筋力増加を調
べています。
彼らの一連の研究をまとめると、2回/週が最も効果が大きく、その効果を100%とすると、3回
/週では約70%、1回/週では35%、1回/2週では約5%の効果があることになります。
この結果を解釈するには、被験者がトレーニング未経験者であることや、体幹の筋群に対象が絞
られている点を考慮する必要があります。
しかし、他の筋群についても、少なくとも急激な効果を必要とせず、マイペースで着実に効果を上
げればよいような場合には、1回/週の頻度でも十分ではないかと思われます。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース132号(1998年12月発行)より転載

環境温度とトレーニング効果

春から初夏にかけては、筋肉がよく動き、バーベルも軽く感じられます。年中温暖な気候のもとで
トレーニングできる人とそうでない人では、不公平があるような気もします。
特に、ボディビルダーの目から見れば、トップ選手の多くがカリフォルニアに集まっていることから
も、暖かな場所でトレーニングした方が、筋肉がよく発達するのではないかと思えることでしょう。
気温とトレーニング効果の関係は、科学的にはよく分かっていないのが現状ですが、リクエストが
ありましたので、今回はこの問題について考えてみます。

なぜ我々の体温は37℃なのか?:タンパク質の機能と温度
まず、なぜ私たちの体温が、20℃でも50℃でもなく、約37℃なのか考えてみましょう。
私たちのからだの機能をつかさどる主役は、酵素などのタンパク質です。
筋が収縮する場合も、神経が活動する場合も、エネルギーを使ってからだをつくる場合(代謝)も
そうです。
こうしたタンパク質のはたらきは、温度に強く依存します。
例えば、さまざまな酵素の活性は、温度が10℃上昇すると平均で約2.5倍も高くなります(これを
Q10=2.5といいます)。
筋の収縮速度や、代謝速度についても同様です。
ところが、温度が41~42℃を超えると、多くのタンパク質は変性し、細胞も死んでしまいます。
このように考えると、37℃前後というのは、タンパク質が変性せずに最も活発にはたらくことので
きる温度ということになります。
しかし、41℃まではあまり余裕がありませんので危険な温度域であるともいえます。
このため、細胞のまわりの温度が上昇し過ぎると、細胞は「熱ショックタンパク質」(HSP)というタン
パク質をつくります。
HSPの多くは、さまざまなタンパク質をつつみ込むようにして、熱による変性から守ります。

ウォームアップをすると身体機能が上がる
スポーツやトレーニングでは、経験的にウォームアップが大事だといわれています。
この理由はおそらく、筋、神経、心臓などのはたらきが、上に述べたように温度に強く依存するた
めです。
Pavlovら(1988)の研究によると、直腸温度(深部体温)が約38.7℃に上昇したときに、身体的パ
フォーマンスが最大(平常温度の約30%増)になるようです。
したがって、この温度を容易に維持できる環境温度が、スポーツやトレーニングをする上で適して
いるといえるでしょう。
気温が低いと、この温度を維持するために余計に筋が活動する必要があり、逆に気温が高すぎ
ると、発汗のために余計なエネルギーが必要になります。
さらに、湿度が高いと、汗が気化しにくくなりますので、からだに熱がたまり(蓄熱)、熱中症を起こ
しやすくなります。

環境温度と筋の発育
以上のようなことから、温暖で湿度の低い、カリフォルニアのような気候は、やはりトレーニングに適しているといえるでしょう。
それでは、このような場所でトレーニングを続ければ、筋肉もより発達しやすいのでしょうか。
少なくともヒトの場合、この問題に正しく解答できるような研究は行なわれていません。
一方、畜産学の分野では、家畜の発育と飼育温度の関係についての数多くの研究があります。
これらをまとめると、ヒツジ、ブタ、ニワトリなどでは、気温28~31℃で飼育した場合に最も筋が発達し、(摂取エネルギー量/筋の発育量)の値も最も小さくなるようです。
この範囲の温度より高くても低くても筋の発達は低下しますが、低温では多くの場合、体脂肪量
が増加します。
したがって、恒温動物では、28~31℃の環境温度が、最小のエネルギーコストで最適の体内環
境を保つことのできる条件と思われます。

環境温度と筋の特性
ブタを12℃の低温で飼育すると、筋の中の遅筋線維の割合が増えるという報告があります。
これは、増加した体脂肪を効率よくエネルギー源にすることのできる遅筋線維が増えると考える
と理屈に合います。
逆に、最近の研究で、シロネズミを1日1時間低温(20℃)の水中で遊泳させたところ、高温
(30℃)の水中で遊泳させた場合に比べ、筋中の速筋線維の割合が増えたという報告もありま
す。
水は空気に比べ、熱伝導率がはるかに高いので、20℃の水中では、ばげしく運動しても、筋温は
1℃以上低下すると考えられます。
低温では筋の収縮速度が低下しますので、もとより収縮速度の大きな速筋線維が多い方が、運
動するためには有利でしょう。
このように、「生活温度」と「運動するときの温度」では、かなり意味が違ってくるものと思われま
す。
「低温環境でのトレーニング」は、「高所トレーニング」の場合と同様、一時的にあえて悪環境でト
レーニングすることで、より高度な適応を得るという目的で使える可能性もあります。
しかし、始終低温では、上記のように筋の発達に支障をきたすでしょう。
したがって、四季の変化の豊かな地方では、冬期のトレーニングに、その寒さをポジティブに利用
すればよいと思われます。
こうしたことは、ウエイトリフティングなどの競技で、寒い国の選手が伝統的に強いことと関連があ
るかも知れません。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース134号(1999年4月発行)より転載

レジスタンストレーニングは脂肪を減らすか?:「浪費遺伝子」の視点から

季節の節目になると、必ず雑誌やテレビの取材がやってきます。
話題は決まって「ダイエット」。
春には「夏に向けて今年こそダイエット!」、秋には「冬太りしないためのダイエット!」などなど。
それが毎年繰り返されるのですが、「ダイエット」という見出しが付けば必ず本が売れるという方
程式があるのだそうです。
今春来た3社はすべて、「レジスタンス運動が脂肪を落とすのに効果的なのはなぜか?」という質
問を用意してきました。
この質問に完璧に答えるのはむずかしいのですが、最近、これに関連した興味深い研究が急展
開していますので、今回はこれらの研究を中心にお話しましょう。

筋と安静時代謝
本連載でも何度かお話しした通り、脂肪をエネルギー源として代謝するためには、これを酸化し
なくてはなりません。
これには酸素が必要ですので、運動で脂肪を落とそうとすると、必然的にエアロビック運動がよい
ということになります。
一方、私達は一日中トレーニングをしている訳ではありませんので、普通に生活しているときにな
るべく多くの脂肪を代謝し、多くのエネルギーを消費することもまた重要になります。
これには、基礎代謝や安静時代謝を高める必要があります。
これらの代謝は主に、体温を維持するための熱生産によるエネルギー消費です。
体の中の主な熱源は肝臓と筋ですので、筋量が多く、かつ熱の発散の良い人は、安静時での代
謝量が多く、脂肪が付きにくいことになります。
実際、筋肥大のための標準的なレジスタンストレーニングを4ヶ月ほど続けると、安静時代謝が
平均で10%ほど上昇します。
したがって、体脂肪を減らすにはレジスタンストレーニングも必要といえます。

UCP-3:新たにみつかった「浪費遺伝子」
筋が収縮するとき、消費するエネルギーの50%以上が熱として放散されることは60年以上前に
発見されましたが、安静時に筋が熱を生産する仕組みは長い間謎でした。
最近、これが「脱共益タンパク質」(Uncoupling protein:UCP )によるものであることが分かって
きました。
UCPはミトコンドリアという、有酸素代謝によってATPをつくる細胞内器官にあり、代謝反応とATP
生成反応の間の連絡(共役)を阻害することで、糖や脂質のエネルギーを直接「熱」にしてしまう
タンパク質です。
したがって、このタンパク質をつくる遺伝子は「浪費遺伝子」とも呼ばれます。
最初、「褐色脂肪」で発見され(UCP-1)、続いてヒトの白色脂肪にも同様のものがあることが分か
りました(UCP-2)。
そして最近、また別のUCP(UCP-3)が、骨格筋、特に速筋線維に多くあることが分かりました。
Claphamら(2000)は、UCP-3を多量に発現する「遺伝子組み替え」マウスをつくると、多食にも
かかわらず体脂肪が少なくなる(「ヤセの大食い」)ことを示しました。
したがって、このUCP-3が筋の発熱に重要な役割を果たし、また「太りにくさ」の体質にも関係して
いると考えられます。

運動によるUCP-3の発見
それでは、このUCP-3の発現は運動によって変わるのでしょうか。
マウスやラットでは、急性の運動後(30分程度の走運動など)、UCP-3の遺伝子とタンパク質の
発現がともに上昇します。
この上昇の程度は、速筋で高く(3~4倍)、遅筋では低い(~1.5倍)ようです。

高脂肪食でUCP-3が減る
また、興味深いことに、ラットに高脂肪食を1ヶ月与えると、筋でのUCP-3の発現が減少し、同
時に体脂肪が増加することが示されました。
したがって、高脂肪の「カフェテリア食」や「ジャンク食」ばかり食べるとUCP-3が減り、太りやす
い体質になる可能性があると思われます。

持久的運動でUCP-3が減る
ラットでは、持久的トレーニングを継続的に行わせると、筋でのUCP-3の発現が減少することが
示されるています。
また、Schrauwenら(1999)は、ヒトの筋でUCP-3の発現を調べ、持久的アスリートでは、その発
現が有意に少なくなっていることを示しました。
これは、持久的トレーニングを継続すると、筋が「エネルギー節約型」になることを示しています。
一方、このことは、持久的エアロビクスを長期継続すると、「油断すると太りやすい体質」つくってし
まう可能性があることをも示唆しています。
マラソンの高橋尚子選手のオフでの変身ぶりはこれが一因かもしれません。

レジスタンストレーニングでUCP-3が増えるか?
以上のように、エアロビクスは、体脂肪を運動中に減らすという視点では効果的ですが、一方UC
P-3の視点からみれば、体脂肪を蓄積する要因ともなる可能性が出てきました。
逆に、「レジスタンストレーニングがUCP-3を増やすか?」については今後の研究課題です。
しかし、
1)筋量が増せば、それに比例して UCP-3絶対量も増えること、2)UCP-3が速筋で多く発現
すること、などからみて、レジスタンストレーニングによってUCP-3が増え、太りにくくなる可能性は
高いのではないかと考えています。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース146号(2001年4月発行)より転載

男の筋肉・女の筋肉

スポーツパフォーマンスに多かれ少なかれ男女差があることは、誰もが認めるところです。
これには様々な要因が関係していますが、筋自体に男女差があるかについては、あまりよくわか
っていないのが現状です。
今回はこの筋の男女差について考えてみましょう。

男女の体型と筋肉量
雌雄の間ではっきりとした外観上の違いがあることは、生物一般にとって、生殖のために特に重
要です。
鳥では、クジャクなどの例のように、雌雄の間で顕著な色彩の違いがあります。
カエルでは、オスの前肢筋はメスのものよりもはるかに発達しています。
ゴリラでは、オスで咬筋が著しく発達していますが、この筋は頭頂に始まるために、オスは一目で
それとわかる「とがった頭」をしています。
ヒトではどうでしょうか?
一般成人の場合、全体重に占める筋の重さの割合は、男子で約40%、女子で約35%といわれ
ています。
筋がこれだけの割合を占めるということは、筋の付き方が、「男らしい体つき」、「女らしい体つき」
を決める一要因となることを暗示しています。
女性のプロビルダーは、男性顔負けの筋をもっていますが、それでも男性のプロビルダーと比べ
ると、首から肩、上腕にかけての筋量が少ないようです。
このあたりの筋が、「男らしい体つき」を特徴づける要因になっていると思われます。

男性ホルモンとその受容体
筋の発達には男性ホルモン(アンドロゲン)が深く関係しています。
そもそも、最も代表的なアンドロゲンであるテストステロンの分泌量には大きな男女差があり、こ
の差が全体としての筋量の差に関係すると考えられています。
アンドロゲンが筋に到達すると、細胞膜を通り抜けて細胞内に入り、さらに核の中に入って、アン
ドロゲン受容体と結合します。
アンドロゲンを結合した受容体は遺伝子に結合し、さまざまなタンパク質の合成を促します。
筋に含まれるアンドロゲン受容体の量は、筋力トレーニングをすることで増大しますので、トレー
ニングを行った後にアンドロゲンが筋に作用すると、筋肥大が助長されると考えられます。

男らしさを特徴づける(?)僧帽筋
最近、Kadiら(2000)は、このアンドロゲン受容体についての興味深い報告をしています。
彼らは、男子パワーリフティング選手を対象とし、大腿四頭筋(外側広筋)と僧帽筋でのアンドロゲ
ン受容体の発現量を比べ、僧帽筋での受容体の発現が有意に高いことを示しました。
このことは、僧帽筋がそもそもアンドロゲンに対する感受性が高い筋であることを示唆します。
残念ながら女性でのデータがありませんが、テストステロンの分泌量の多い男性では、僧帽筋が
下肢の筋に比べて発達しやすいといえるでしょう。
肩や上腕の筋群にも同様の傾向があり、「男らしい」筋系をつくる一要因になているのではないか
と想像されます。

ドーピングと男性ホルモン受容体
彼らの論文では、アナボリック・ステロイドのドーピングを行うと、僧帽筋のアンドロゲン受容体の
発現量がさらに増大することも示されました。
一方、外側広筋ではそのような変化は起こらないようです。
したがって、僧帽筋では、アンドロゲンがその受容体の合成を高め、そこにアンドロゲンが再び作
用すればますます筋が肥大するといった正の循環機構がはたらくことになります。
こうした機構によって、僧帽筋の発達の程度にはますます男女差が生じることになると考えられま
す。
論文自体に記載されているわけではありませんが、この研究の発端は、ステロイドビルダーの中
に、時として異様なほどの僧帽筋の発達が見られることにあると想像されます。
こうした認識は、長いことボディビル競技に携わってきた方であれば、誰でも抱いていると思いま
す。

筋線維の男女差
筋の大きさについてだけでなく、その生理学的特性についてはどうでしょうか?
アクチンやミオシンなど、筋をつくるタンパク質の遺伝子は男女で同じですので、これらのタンパク
質自体に男女差があることは考えにくいでしょう。
しかし、最近になって Staronら(2000)は、外側広筋の筋線維組成に関する10年間の膨大な
データを検討し、若干ですが男女差があることを報告しています。
ヒトの筋線維には、大きく分けると遅筋線維(タイプ I 線維)と速筋線維(タイプ II 線維)がありま
す。
さらにタイプ I を2種(タイプ I,Ic)、タイプ II を4種(タイプIIc,IIa,IIab,IIb)に分けますが、便宜上
はタイプ I,IIa,IIbの3種類で考えれば十分とされています。
それらの存在比を見ると、男性で IIa>I>IIb の順に多いのですが、女性では I>IIa>IIb になる
ようです。
このことは、平均として見れば、女性の筋は男性の筋に比べ、スプリント的な競技には不向きで
肥大しにくく、逆に持久的競技に向いているということになります。
このことは、スポーツ競技などでの一般的な印象とよく合ってはいます。
ただし、男女いずれの場合でもタイプ I 線維の占める割合は40~50%の範囲内ですので、こう
した平均値での差よりも、個人差の影響の方が重要ともいえます。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース147号(2001年6月発行)より転載

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レジスタンストレーニングとタンパク質摂取のタイミング

講習会や講演で、「トレーニング直後にプロテインを飲んだ方がよいのか?」という質問をよく受け
ます。
この質問に正確に答えるのはむずかしく、動物実験などのデータから類推して、ややあいまいな
答えをしていたように思います。
しかし最近、デンマークの Esmarck ら(2001)が、トレーニング直後のタンパク質摂取が筋肥大
に著しい効果を示すことを、ヒトを対象にした実験で示しました。
そこで今回は、トレーニング効果を高めるためのタンパク質摂取のタイミングについて考えてみま
しょう。

トレーニング直後のプロテイン摂取が筋肥大を助長した
Esmarckらは、高齢男性(平均年齢74歳)にレッグプレス、ラットプルダウン、レッグエクステン
ションをそれぞれ3-4セット(強度は20-8RM、頻度は3回/週)行わせ、大腿四頭筋の筋断面積、
膝伸展筋力などの変化を調べました。
トレーニング時間は朝8時から10時の間の約30分間で、トレーニング直後にプロテインサプリメン
ト(タンパク質10g、炭水化物7g)を摂取するグループと、トレーニング2時間後に同じサプリメント
を摂取するグループに分けました。
その結果、トレーニング直後に摂取したグループでは、筋断面積で平均7%、等速性筋力で平均
15%の増大が見られたのに対し、2時間後に摂取したグループでは、これらに有意な増大は見ら
れませんでした。
同様の効果を示す研究は、動物実験ではすでに行われています。
鈴木ら(1999)は、ラットに10週間のトレーニングを行わせ、トレーニング直後に餌を与えると、4
時間後に餌を与えた場合に比べて、筋肥大の程度が大きいことを示しました。
Esmarckらの研究は、2時間後にプロテインを摂取したグループに全くトレーニング効果が現れな
かったことに問題を残しますが、タンパク質摂取のタイミングの重要性をヒトで示した最初の研究
といえるでしょう。

トレーニング後のタンパクの合成と分解
筋の内部では、筋タンパク質の合成と分解の両方が起こっています。
合成量から分解量を差し引いたもの(これを「正味のタンパク合成」と呼びます)がプラスであれば
筋は肥大する方向へ、逆にこれがマイナスであれば筋は萎縮する方向へ向かいます。
いくつかの研究によれば、トレーニング後に筋のタンパク合成は増大し、3時間後にピークとなり、
その後48時間後にわたってゆっくりと低下していきます。
一方、タンパク分解を経時的に調べることはきわめて困難です。
しかし、持続的な筋収縮や、筋線維膜の微小な損傷により、カルパインというタンパク分解酵素
が活性化されることから、トレーニング刺激がタンパク分解も同時に高めることが類推されます。
実際、Phillips ら(1997)は、通常はトレーニング後に正味のタンパク合成量がプラスになるのに
対し、空腹状態でトレーニングを行い、その後も栄養補給を行わないと、正味のタンパク合成がマ
イナスになってしまうと報告しています。

アミノ酸摂取の効果
最近、Rasmussenら(2000)は、トレーニング1時間後に必須アミノ酸6g と炭水化物35g を摂取
すると、筋のタンパク合成が摂取前に比べて約3.5倍に増大することを示しました。
このことは、アミノ酸がタンパク合成を刺激する調節因子としてはたらくことを示唆しますが、その
機構の詳細は不明です。
上記の Esmarck らの実験でも、与えたタンパク質はほんの10g ですので、これに含まれる必須
アミノ酸のいずれかがタンパク合成を高めたものと想像されます。
一方、分岐鎖アミノ酸(必須アミノ酸に含まれる)やグルタミンは、筋タンパク分解反応の主要な生
成物となりますので、これらを予め摂取することで、トレーニング中やトレーニング後のタンパク分
解を低減できる可能性もあります。

他の反応との関連性
私たちのいくつかの研究からも、トレーニング後に経時的にさまざまな反応が起こることがわかっ
てきました。
まず、トレーニング後15分をピークとして成長ホルモンの分泌が起こります。
続いて、トレーニング後1時間をピークとして、「早期転写因子」の遺伝子発現が起こります。
これは、さまざまな遺伝子にはたらいて、タンパク合成を「オン」にするスイッチのようなものです。
おそらくこうした過程を経て、トレーニング後3時間に筋タンパク合成がピークを迎えるのでしょう。
アミノ酸の中で、アルギニンとオルニチンは成長ホルモンの分泌を促すはたらきをもつことが知ら
れています。
したがって、これらを含む食品を早期に摂取することで、トレーニング後の成長ホルモンの分泌が
高まったり、持続したりするかもしれません。

トレーニング前後の食事管理が重要
ここに述べたいくつかのトレーニングは、あくまでも実験上のプログラムに基づいています。
高齢者の場合を除き、実際のトレーニングでは、量も大きく持続時間も長くなるでしょう。
そのような場合には、タンパク分解の増大やホルモン分泌はトレーニング中にすでに始まってい
ると思われます。
したがって、トレーニグ前とトレーニング後のなるべく早い時間帯に、タンパク質と炭水化物を含
む食品を摂取するのがよいでしょう。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース150号(2001年12月発行)より転載

酒と筋力トレーニング

この原稿を書いている今は、桜が満開です。
花と酒なくしては、おそらく人生味気なくなってしまうでしょうし、日頃トレーニングとダイエットに取
り組んでいる諸氏も、「酒は別物」と決めているかもしれません。
さまざまなスポーツの名選手にも、酒にまつわる逸話がつきものです。
私自身はあまり酒をたしなむ方ではありませんが、付き合いのあるトップビルダーやトップ選手に
は、「ザル」のような酒豪も多いように思います。
そこで今回は、酒とトレーニングの関係について考えてみましょう。

酒は健康によいか?
洋の東西を問わず、酒は太古の昔から文化の必需品となってきました。
こうした背景もあり、喫煙が健康の大敵とされているのに対し、飲酒は比較的大目に見られてき
た傾向があります。
ひとくちに酒といっても、純粋なアルコールに近いものから、薬効のある成分を含む「薬用酒」まで
さまざまですが、その共通した特徴は、多かれ少なかれアルコール(エタノール)を含むということ
です。
実験室では、組織や細胞を「固定」する、すなわち、形態を保存したまますばやく殺すために70%
アルコールをよく用います。
このように、アルコールには強い細胞毒性がありますので、飲酒などにより低濃度のアルコール
が体内を循環すると、神経系などに急性の変化をもたらし、また解毒中枢である肝臓に慢性の変
化をもたらすことになります。
一方、適度の飲酒であれば、逆に健康によいとする報告もあります。
Liao ら(2000)は、アメリカ人男女(40歳以上、約4万人)を6年間追跡調査し、1日1回飲酒する
人の方が、飲酒しない人に比べて死亡率が低かったと報告しています。
その理由については不明ですが、少量のアルコールが,血小板の機能やフィブリノーゲンの生成
などを低下させることにより、動脈硬化のリスクを低減するためと考えられています。
また、フランス人では、ワインの摂取量と虚血性心疾患による死亡率が負の相関を示します。
これは、「フレンチパラドックス」として知られ、赤ワインに含まれるポリフェノールが強い抗酸化作
用をもつためと解釈されています。

大酒は即座に筋を破壊する
上記はあくまでも少量のアルコールの話しですので、安心はできません。
実は、古くから、痛飲がたちまち筋を破壊することが知られていて、「急性アルコール筋症(ミオパ
チー)」と呼ばれています。
この場合、筋力低下とともに、筋痛、血中へのミオグロビンの溶出、筋線維(特に速筋線維)の部
分的壊死などが起こると報告されています(Langら,2001)。
特に飲酒にまだ慣れていない若い頃、痛飲後に著しく筋力が低下したという経験をお持ちの方も
多いかもしれません。
心筋でも同様のことが起こるとされています。
はげしいトレーニングによっても筋線維の微小な損傷が一時的に起こり、この場合には修復機構
の活性化によって筋がさらに強化されると考えられます。
しかし、アルコールによる筋症の場合には、筋のタンパク合成自体が著しく低下してしまうため、ト
レーニングと同様の効果(超回復効果)は期待できません。

毎日の酒も筋を破壊する
酒を長期にわたって常飲した場合はどうでしょうか。
この場合には、次第に筋力が低下し、筋が萎縮するという症状が現れることが知られていて、「慢
性アルコール筋症」と呼ぶことができます。
筋力の低下は、それまでの総アルコール摂取量にきれいに比例するようです(Kiesslingら、
1975)。
実際、アルコール中毒患者はやせていて、筋力がきわめて低いのが一般的です。
この場合、一回の飲酒による筋ダメージというよりは、成長ホルモンやインスリン様成長因子
(IGF-I)の分泌低下が主要因となると考えられています。
Langら(2001)は、ラットにアルコールを含む餌を16週間与え続けたところ、血中 IGF-I 濃度と骨
格筋のタンパク合成量がともに約40%低下したと報告しています。

アルコールの代謝との関連
摂取したアルコールは、肝臓でアルコール脱水素酵素によって酢酸とアセトアルデヒドに分解さ
れます。
上記の急性および慢性の筋症は、これらの分解産物が原因ではなく、アルコールそのものが原
因であることが確かめられています。
アルコール脱水素酵素の活性は遺伝の影響を受けていて、日本人は欧米人に比べ低活性型が
圧倒的に多く、そのために酒に弱い人が多いとされています。
したがって、やはり「酒に強くない」と自認される方ほど要注意といえます。

どれくらいが適量か?
急性、慢性の筋症ともに、アルコールの摂取量を減らせば、回復に向かいます。
それでは、毎日楽しんでも筋に悪影響を与えず、健康にもよい適量はどのくらいでしょうか。
欧米の研究では、1日あたりエタノール60g 相当とされています。
ビールでは1日約1.2 l (2本)、ウイスキーでは約 150 ml(ボトル1/5)くらいでしょう。
ただし、これは「弱くない人」のための基準で、日本人では、一般にこの半分程度とされています。
お酒の好きな方には少々悲しい数字かも知れませんが、サプリメントに払う注意を、ほんの少し
酒にも払ってみてはいかがでしょう。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース152号(2002年4月発行)より転載

脂肪燃焼のための最適トレーニング

エアロビック運動と体脂肪の分解
生化学的には、脂肪を分解(代謝)するには酸素が必要です。
したがって、エアロビック運動が効果的ということになります。
エアロビック運動と脂肪の代謝については、オストランドとロダール(1970)のきわめて有名な研
究があります。
彼らは、運動中の呼吸商(二酸化炭素排出量/酸素摂取量)を測ることにより、1)安静時およ
び、運動強度が最大酸素摂取量の半分程度(50~60% VO2max)までは、糖質と脂肪によるエネ
ルギー供給の割合がおよそ1:1であること、2)これより高い運動強度では、糖代謝への依存度
がはるかに大きくなることを示しました。
さらに、その後の研究から、たとえ低強度の運動であっても、実際に体脂肪が分解されて、血中
の遊離脂肪酸濃度が上昇するまでには、最低20分程度かかることもわかりました。
これらのことから、「運動によって体脂肪を燃焼させるには、低強度のエアロビック運動を最低20
分以上続けることことが必要」ということが定説になりました。

アネロビック運動と体脂肪の分解
一方、レジスタンストレーニングに代表されるアネロビック運動のエネルギー源はほぼ100%糖質
といえます。
しかし、これまで何度か述べてきたように、レジスタンストレーニングはその処方に依存して、成
長ホルモンの分泌を促し、成長ホルモンは体脂肪を分解するきわめて強い刺激となります。
実際、成長ホルモンを注射すると、その1時間後から体脂肪の分解が上昇します(Mollerら、1999)。
また、長期的には筋肉量を増大させ、安静時代謝を高める効果をもちますので、アネロビック運
動は、「運動していないときの脂肪分解を高める」効果をもつといえるでしょう。

燃えにくい脂肪
持久的競技のパフォーマンスの観点でも、脂肪をいかに有効に使うかが重要です。
体内のエネルギー源としては、脂肪はグリコーゲンなどの糖質よりはるかに多量にあります。
にもかかわらず、持久的運動で疲労困憊したときには、糖質の量が著しく低下しているのに対
し、脂肪の量にはまだ余裕があるからです。
このため、運動中の脂肪分解をさらに高めるような工夫が考えられています。
最も単純なものは、1週間ほど高脂肪食を摂ることで、脂質代謝を上昇させるという発想です(オ
イル・ダイエット)。
また、カフェイン、L-カルニチン、アミノ酸混合物などにもそのような効果があるとする考えもありま
す。
しかし、Hawleyらの総説(1998)によると、少なくとも実験的には、これらのうち運動の持続力の
向上に若干でも効果が認められるのは、カフェインのみであるということです。

脂肪の「分割払い」は可能か?
それでも、低強度のエアロビック運動では、エネルギー源の約50%は脂肪でまかなわれますの
で、一緒に燃やす糖質を適切に摂った上で運動することは効果的といえます。
一方、「運動を持続しないと脂肪が分解され始めない」ことは何とかならないでしょうか。
Tsumuraら(2002)の最近の研究によれば、少なくとも肥満の人では、運動による脂肪の「分割
払い」も可能のようです。
彼らは、肥満患者に50Wの自転車運動をさせ、脂肪の分解に伴う血中遊離脂肪酸濃度を測りま
した。
その結果、(5分運動、5分休息)×6セット、(10分運動、5分休息)×3セット、30分の運動持続、の
いずれの場合にも、同程度の脂肪分解が認められました。
このように、場合によっては、必ずしも運動を長時間持続しなくてもよい可能性がでてきました。

中枢神経系のかかわり
このように、運動による体脂肪の減量には多くの要因が関与していて、単純ではありません。
加えて、動物を用いた最近の研究から、これに中枢神経の疲労の程度も関係していることが示
唆されています。
Inoueら(1999)、Yamasakiら(2002)は、1)運動によって疲労したマウスの脳内に、活性型
TGF-β3という物質(サイトカイン)が増えていること、2)脳内にこの物質を注入すると、マウスの
自発的活動量が低下するとともに、脂肪の代謝が上昇すること、を示しました。
したがって、脂肪の分解開始には、運動の持続時間そのものではなく、中枢神経の疲労が必要
なのかもしれません。

トレーニングへのヒント
以上の知見を総合すると、体脂肪減量のための「賢いトレーニング処方」へのヒントが見えてくる
ようです。
ポイントで整理すると:1)まずレジスタンストレーニングを行う;2)これにより成長ホルモンが分泌
され、中枢にも疲労が生じる;3)一息入れてから、低強度のエアロビック運動を行う;4)これによ
り、成長ホルモンで分解された脂肪がエネルギー源として利用され;5)さらに中枢神経の疲労も
大きいため脂肪の分解も早く起こる。
ただし、これを検証するにはまだ多くの実験が必要となるでしょう。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース156号(2002年12月発行)より転載

伊豆の修善寺

修善寺.jpg休日に、伊豆の修善寺に行ってきました。
マイナスイオンたっぷりで癒されました。

Kentai 加藤

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ホシノスポーツ

ホシノスポーツ.jpg

群馬県民なら誰もが知っているホシノスポーツです。
ライバルに勝ちたい、パフォーマンスをあげたい、といったアスリートの悩みに、
わかりやすく親切にアドバイスしてくれます。

Kentai 浜田

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速筋線維を増やす方法

速筋と遅筋
骨格筋は、さまざまな性質をもった筋線維からできていて、これらを大きく、速筋線維(FT線維)と
遅筋線維(ST線維)に分けることができます。
FT線維は、収縮速度が速く(STの約2倍)、力が強いが(断面積当たりSTの1.2-1.3倍)、持久性
に乏しいという特徴があります。
ST線維は、有酸素性代謝にすぐれているために持久力が高く、酸素を運搬するミオグロビンとい
う赤いタンパク質が多いので赤っぽい色をしています。

速筋と遅筋のサブタイプ
FTとSTにはさらに細かいサブタイプがあります。
従来から、筋線維のタイプ分けには、「ATPase染色」という、特別な染色法で染め分ける方法が
用いられてきました。
この分類では、FTをタイプII線維、STをタイプI線維と呼びます。
染色条件を細かく変えることにより、タイプII線維はさらにタイプIIa、IIab、IIb、IIc、IIac線維に、タイ
プI線維はさらにタイプIとIc線維に分けることができます。
速度が速く、力が大きいという観点では、IIb>IIab>IIa>IIac>IIc>Ic>Iの順になります。
ただし、一般的にはIIb>IIa>Iといった、より簡単な順序づけが用いられます。

タンパク質による分類
筋線維がもつタンパク質の違いで分類する方法もあり、近年ではこちらの方が客観性が高いとい
う点で好まれています。
最もよく用いられるのは、収縮タンパク質であるミオシンの違いに基づくものです。
ミオシンは重鎖(MHC)と軽鎖(MLC)からできていますが、そられのいずれにも、速筋型と遅筋型
があり、MHCには、MHC-I、IIa、IIx、IIbの4種類があります。
染色法による分類との対応が完全になされているわけではありませんが、おおむね、タイプIIbは
MHC-IIbを、タイプIIabはMHC-IIxを、タイプIIaはMHC-IIaを、タイプIIcはMHC-IIaとIを、タイプIは
MHC-Iをもつと考えられます。

トレーニングの効果
タイプI線維とタイプII線維の割合は、まず遺伝で決まることがわかっています。
では、トレーニングによって、こうした筋線維組成を後天的に変えることはできるのでしょうか。
動物実験では、持久力トレーニングによって、タイプI線維が増え、タイプII線維が減ります。
ヒトでそのような顕著なタイプ変換が起こるかは確かではありませんが、タイプIIの中でタイプIIcが
増えるといった、遅筋化に向かう変化が起こります。
レジスタンストレーニングについては、大容量のトレーニングを継続することにより、タイプIIbから
IIaへ(ただし、ヒトではIIbはそもそもきわめて少ないため、むしろIIabからIIaへ)、さらにIIcからIIa
へ、つまり、オールマイティーなIIa線維へ収束するような変化が起こります。

休息によるMHCの「超回復」
レジスタンストレーニングのこのような効果は確かに重要ですが、欲をいえば、パワーのあるタイ
プIIbやIIabをやや犠牲にしてしまうともいえます。
以前ご紹介した通り、最も速いタイプIIb線維を増やすには、宇宙飛行、「寝たきり」など、筋が萎縮
するようなことをする以外にないと考えられてきました。
ところが、もっとかしこいやり方があるかもしれないということが、Andersonら(2001)の研究から
示唆されています。
彼らは、レジスタンストレーニングを3ヶ月行った後、3ヶ月の完全休養をとった場合の、MHCのタ
イプ変化を調べました。
その結果、1)トレーニングによってMHC-IIxが減り、 IIaが増えること、2)完全休養に入ると、逆に
IIaが減る一方、IIxが次第に回復し、やがてトレーニング前のレベルを超えること、などがわかりま
した。
すなわち、長期的にみると、MHC-IIxの量に「超回復」が起こることになります。
ただし、この研究では、あまりに長期にわたる休養のため、筋力自体はトレーニング前と同程度
にまで低下してしまっています。

ピリオダイゼーションへのヒント
陸上競技や競泳では、大容量のトレーニング後に、段階的に容量を落としていくと、競技パフォー
マンスが向上することが知られています。
こうした方法は、「トレーニングのピリオダイゼーション」として、一般的なレジスタンストレーニング
でも利用されています。
そのメカニズムには、過度の疲労からの回復が関係しているでしょうが、Andersonらの研究から
類推すると、MHC-IIxの微妙な増加が関係している可能性もあります。
また、月単位、週単位できめ細かくトレーニング容量を増減させるようなテクニックにより、次第に
MHC-IIxの量を増大させていくことも可能かもしれません。
同様の方法は、トップレベルのウエイトリフターが用いていますが、他のさまざまな競技にも有用
でしょう。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース153号(2002年6月発行)より転載

東部大会準優勝!

東部大会準優勝!.jpg

先日、息子が所属するチェリーズが東部大会で準優勝しました。
二日間のトーナメントで、決勝は息子が投げましたが強豪チームに僅差で敗れました。
県大会に進むことが出来るので、ぜひ県大会では優勝目指してがんばってほしいです。

Kentai 上野俊彦

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海.jpg

九十九里に行ってきました。
青一色の風景に、とても癒されました。

Kentai 出町

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スローリフトの効果

最近,関節や循環器にあまり負担をかけずに筋の機能を高めるトレーニングとして、「スローリフ
ト」が注目されています。
その実際の効果については、まだ十分に研究されているわけではありませんが、全米ストレング
ス&コンディショニング協会(NSCA)も、「筋を肥大させるにはそれなりの効果がある」という見解
を示しています。
今回はこのスローリフトについて考えてみましょう。

クイックリフトとスローリフト
負荷がそれほど大きくない場合、負荷を上げ下げする速度をある程度コントロールすることがで
きます。
速い動作と遅い動作の両極にあるのが、それぞれクイックリフトとスローリフトです。
クイックリフトには長い歴史があり、重量挙げのクリーン、スナッチ、ジャークなどがその代表的な
種目です。
クイックリフトの特徴は、負荷に最大限の上向きの加速度を与え、あとは慣性に任せるということ
です。
このような場合、負荷に大きな加速度を与えるため、(力)=(質量)×(加速度)に相当するきわめ
て大きな力が瞬間的に発揮されます。
例えば、自重のみのジャンプでは、体重が70kgであっても、瞬間的には200kg重を超える力が床
に対して発揮されます。
外見上の負荷が小さくとも、実際にはこのような大きな力を筋が生み出し、関節などにも同等の
負担がかかるわけです。
一方、スローリフトは、あえて動作速度を遅くして行います。
例えば、ヒンズースクワットを、10秒かけてしゃがみ、10秒かけて立ち上がるようにします。
この場合、発揮される力は体重とほぼ同じですが、力積(=力×時間)がきわめて大きくなるという
特徴があります。

動作速度を調節するしくみ
一定の重さの負荷を、速く上げたり遅く上げたりするのは、どのようにして調節されているのでしょ
うか。
筋肉を構成する1本1本の筋線維は、基本的には最大の力を発揮するか、力を発揮しないかの2
つの状態しかとりません。
これを「全か無の法則」と呼びます。
したがって、筋の中の筋線維すべてを活動させると、必然的に最大筋力に対する負荷の割合で
決まる最大の速度で負荷が上がるということになります。
筋の中で活動する筋線維の数を減らせば、発揮筋力に対する相対的な負荷が大きくなりますの
で、速度は遅くなります。
より正確には、これに筋線維を活動させる神経信号の周波数も関わってきますが、基本的には、
筋の活性化のレベルを高めれば速度は速くなります。
したがって、一度により多くの筋線維を活動させるためには、なるべく速い速度で負荷を上げた方
がよいということになります。
この点が、クイックリフトのメリットのひとつといえます。
逆に、スローリフトでは、動作中に活動している筋線維の数は多くありません。

筋力発揮と筋内血流
上記のような生理学的メカニズムに立てば、より多くの筋線維をトレーニングするためには、常に
出しうる最大の速度で負荷を上げる方がよいということになります。
しかし、これまでのさまざまな研究から、効果的に筋を肥大させるためには、筋力の発揮時間も
重要であることが示唆されています。
アイソメトリックな筋力発揮を持続的に行う状況を想像してみてください。
このような場合、筋力発揮が最大筋力の約40%のレベルを超えると、筋の内圧上昇によって、
筋内の血流が低下することがわかっています。
このような状態が続くと、筋内が低酸素になり、乳酸などの代謝産物も蓄積します。
その結果、代謝物受容反射というしくみによって下垂体から成長ホルモンが分泌されたり、筋線
維周辺の成長因子の濃度が変化したりして、筋線維の肥大が促されるというメカニズムが考えら
れます。

アイソメトリックと何が違うのか?
このように考えると、いわゆる「空気椅子」のようなアイソメトリックトレーニングがよいとなります
が、実はそうではありません。
アイソメトリック運動は、外に向かって仕事をしません。
加えて、筋が生産する熱もきわめて少ないという特性があります。
したがって、エネルギー消費が小さく、代謝物の蓄積効果も小さいことになります。
したがって、3分間の「空気椅子」よりは、1回20秒のスロースクワットを10回行った方がよいとい
えるでしょう。
ただし、立ち上がった状態で休みを入れることなく、常に筋の緊張を解かないようにする必要があ
ります。

ある程度の負荷は必要
負荷については、際限なく軽くて良いというわけではありません。
前述のように、筋の血流に影響を及ぼすのは最大筋力の40%以上の負荷ですので、やはりこの
あたりの負荷が目安となるでしょう。
スクワットでは、1RMが自体重と同等レベルの重量であれば、負荷なし(自重のみ)のスロースク
ワットで顕著な効果が期待できることになります。

実際のトレーニング効果
スローリフトの実際の効果については、私の研究室でも予備的な実験を行っています。
レッグエクステンションを用いた実験では、50%1RM の負荷、10回×3セット、3ヶ月という条件
で、10-15%の筋肥大が起こりました。
これは十分な効果といえるでしょう。
高齢社会を迎え、こうしたさまざまな工夫をトレーニング方法に取り入れることが、ますます重要と
なると考えられます。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース157号(2003年2月発行)より転載

「筋肥大遺伝子」をめぐる新たな展開:増大するドーピングの危機

以前、私たちの筋量をコントロールしていると考えられる遺伝子のお話しをしました。
このような遺伝子のはたらきを解明することは、より効果的なトレーニング方法や、さまざまな筋
疾患の治療法を開発する上で有用です。
特に最近、「ミオスタチン」と呼ばれる成長因子の遺伝子についての研究が進み、新たな展開が
見えてきました。
同時に、インターネットなどで「ミオスタチンブロッカー」という、怪しげなものまで販売されていると
いう噂も耳にします。
そこで今回は、このミオスタチンに関する最近の研究の動向についてお話ししましょう。

筋量をコントロールするメカニズム:IGF-Iとミオスタチン
トレーニングによって筋が肥大・成長するメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、
力学的ストレス、ホルモン、成長因子などのさまざまな要因がこれに関わっていると考えられま
す。
成長因子とは、内分泌腺以外のさまざまな細胞が分泌し、局所的にはたらいて細胞や組織の成
長や分化を調節するホルモン様物質です。
このうち、インスリン様成長因子-I(IGF-I)が、トレーニングによる筋肥大という観点では最もよく
研究されています。
IGF-I にもいくつかのタイプがありますが、そのうちのひとつは筋線維そのものから分泌され、
筋線維自身や周囲の細胞に作用して、筋肥大を促します。
以前ご紹介したように、「ウイルスベクター」という遺伝子の運び屋を利用してこのIGF-I遺伝子を
マウスの筋に導入すると、特に運動しなくても筋が肥大することがわかっています。
一方、ミオスタチンは、筋で常につくられていて、その成長を強く抑制している成長因子です。
やはり以前もにご紹介しましたが、例えばミオスタチンの遺伝子を破壊したマウス(ノックアウトマ
ウス)では、筋量が通常のマウスに比べて3倍にもなります。
Guernecら(2003)は最近、(IGF-I/ミオスタチン)の発現比の上昇が筋の肥大や成長にとって
重要であると報告しています。

トレーニングによってミオスタチン発現が低下する
当初、ミオスタチンは発生段階での筋の成長にのみ関与し、胎児期に筋線維が過剰に増殖する
のを抑えていると考えられていました。
しかし、私たちの研究(Kawada, Tachi, Ishii, 2002)をはじめいくつかの研究が、過負荷によって
成体の筋が肥大するときに、ミオスタチンの発現が低下することを見出しました。
したがって、トレーニングなどによって筋が肥大するときには、筋でのミオスタチンの発現が低下
し、同時にIGF-Iの発現が上昇するものと考えられます。
これらの研究はマウスやラットを用いたものですが、最近Rothら(2003)は、ヒトの筋から採取し
たサンプルについて調べ、高強度のレジスタンストレーニングによって肥大した筋で確かにミオス
タチンの発現が低下していることを示しました。

抗ミオスタチン抗体の驚異的効果
一方、ミオスタチンの作用を人為的にブロックする研究も行われてきました。
その中で最近、特筆すべき研究が2件報告されています。
ひとつはBogdanovich ら(2002)が科学誌「ネイチャー」に報告したもの、他方は Whittemoreら
(2003)の報告です。
いすれも、ミオスタチンに対するモノクローナル抗体(特定のアミノ酸配列のみを認識して結合す
る、特異性の高い抗体)をマウスに注射(体重1kg当たり60mgを1回/週、腹腔内に)し、筋の変化を調べたものです。
成体内でつくられるミオスタチンに抗体が結合すれば、その作用が抑えられ、筋が肥大すること
が期待されます。
Bogdanovichらは筋ジストロフィーマウス(mdx)に3ヶ月間この抗体を注射し、1)体重の増加(約
30%)、2)エネルギー消費の増加(約30%)、3)筋重量の増加(約30%)、4)筋線維断面積の
増加(約33%)、5)筋力の増加(約33%)、6)筋損傷の低減、などを認めました。
Wittemoreらは同様の操作を通常のマウスに施し、やはり同様の効果を認めています。
彼らは注射をする時期と期間についても調べていて、完全に成長が止まった週齢のマウスでも筋
肥大が起こること、2週間(たった2回の注射)でも約10%の筋量増加が起こることを報告してい
ます。

期待される臨床応用と増大するドーピングの危機
これらの研究で示された抗ミオスタチン抗体の効果は驚異的とも言えますが、加えてその効果は
筋に限定されていて、他の臓器への副作用は全く見られないとのことです。
こうしたことから、筋ジストロフィーをはじめとした筋萎縮性疾患や老化による筋機能低下の治療への応用が期待されています。
遺伝子組み替えによってヒトの抗ミオスタチン抗体を量産する方法や、体内の免疫細胞に抗ミオ
スタチン抗体を生産する遺伝子を直接導入する方法の開発がすでに始まっているかもしれません。
しかし、臨床面での有用性が期待されるほど、ドーピングに悪用される危険性も高まるといえるで
しょう。
一方、研究での最前線から見れば、本物の「ミオスタチンブロッカー」が現時点で存在し、まして
一般に出回る可能性は皆無に近いといえるでしょう。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース161号(2003年10月発行)より転載