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Kentaiニュース188号発行

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アスリートのための栄養とトレーニングの情報誌、Kentaiニュースの188号が出ました!
今回はボディビル特集です。
ボディビル日本チャンピオンの合戸孝二選手へのインタビュー、
トレーニング・ワンポイント・レッスンなど、盛り沢山の内容です。
Kentaiニュースは、全国のスポーツショップなどで、無料配布中です。
また、Kentaiショップで会員登録された方には毎回Kentaiニュースをお届けしています。

Kentai 加藤

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シーズンイン

シーズンイン.jpg

MTBクロスカントリーの日本公式戦『ジャパンシリーズ』が鹿児島で開幕しました。
これから、月2回のペースでレースです。
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Kentai 出町

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赤筋、白筋、ピンク筋

以前、ある雑誌の取材で「ピンク筋」の話をしたところ、耳慣れないことばということで注目され、
ダイエットがらみでテレビの取材を受けるまでになりました。
しかし、「ピンク筋」は、特に新しい用語ではなく、1970年代の生理学では普通に使われていたも
のです。
その後、筋線維のタイプを示す専門用語として「タイプI」、「タイプIIa」、「タイプIIb」などが定着する
に従い、半ば「死語」になってしまいました。
今回はこの「ピンク筋」について少し詳しくお話しします。

なぜ「赤、白、ピンク」か
筋をつくる筋線維はまず、速筋線維(タイプII線維)と遅筋線維(タイプI線繊維)に大きく分けられます。
タイプII線維は、スピードやパワー発揮にすぐれ持久性に乏しい筋線維、タイプI線維は逆に、スピ
ードに乏しく持久性にすぐれた筋線維といえます。
タイプI線維はまた、酸素を用いて脂質などを持続的に分解してエネルギーを生産する能力(有酸
素性代謝活性)が高く、そのために必要なミオグロビンやチトクロームなどのタンパク質を多くもっ
ています。
これらのタンパク質は、ヘモグロビンと同様に赤い色をしているため、タイプI線維は見た目にも血
液のように赤く、「赤筋」と呼ばれます。
逆にタイプII線維はこれらのタンパク質が少なく、白く見えることから「白筋」と呼ばれます。
タイプII線繊維はさらに、IIa、IIb、IIcなどの「サブタイプ」に分けられますが、ほとんどがタイプIIaとタ
イプIIbで占められます。
タイプIIb線維は、最もスピードがあり持久性に乏しい、いわば「純白筋」。
タイプIIa線維はスピードも持久性もそこそこ兼ね備えたオールマイティーな筋線維で、有酸素性
代謝のためのミオグロビンやチトクロームを適度にもつことから、赤と白の中間である「ピンク筋」
に相当することになります。

赤筋、白筋の機能
上記のような特性から、白筋(タイプII)の主なはたらきはダイナミックな運動を発現することであ
り、赤筋(タイプI)の主なはたらきは姿勢を維持したり、関節を安定化したりすることであるというこ
とができます。
しかし、ヒト体内の筋をながめてみると、それぞれの筋ごとに赤白がはっきり分かれているわけで
はありません。
個人差はありますが、平均してしまうと、ほとんどの筋で「赤:白」は1:1になると報告されていま
す。
したがって、体内では、ほとんどの筋が上の二つのはたらきを多かれ少なかれ担っているという
ことになります。
ただし、前回お話しした大腰筋や、肩の外旋筋などの「インナーマッスル」は、それらの役割から
みて、やや「赤優位」の筋といえるでしょう。
また、ひとつの筋内でも、一般的に表層部は白が多く、深層部は赤が多いという傾向があります。

白とピンクは容易に入れ替わる
このように、一般人の一般的な筋では赤(タイプI):白(タイプII)は1:1で、この比率での個人差は
まず遺伝で決まってしまいます。
動物実験では、持久的トレーニングを長期間続けると白から赤への転換が起こり、不活動によっ
て赤から白への転換が起こることが示されていますが、まだヒトではそこまでの変化は観察され
ていません。
一方、タイプIIの中での白(タイプIIb):ピンク(タイプIIa)は、運動や環境によって激しく変わること
がわかっています。
すなわち、白がピンクになったり、ピンクが白になったりすることは容易に、しかも数週間の間に起
こります。

パワーアスリートの証はピンク筋
Kraemerらの一連の報告によると、パワー系競技のトップアスリートの筋では、タイプIIb、すなわ
ち「純白」線維はほとんど見られません。
高強度の筋力トレーニングでは通常、繰り返し大きな筋力を発揮したり、すみやかに筋力を回復
させたりすることが必要になってきます。
こうした代謝的な要求が、白をピンクに変えると考えられます。
したがって、アスリートの高いパフォーマンスは「ピンク筋」に支えられているといえます。
一方、日常的なレベルの筋力発揮や、低強度のエアロビックトレーニングでは、そもそもタイプII線
維はあまり使われませんので(サイズの原理)、「白は白のまま」になります。

UCP-3:熱源としてのピンク筋
骨格筋は体温維持にも重要なはたらきをしています。
からだの熱生産のうち、約60%が骨格筋によるものです。
有酸素性代謝の熱効率は約50%ですので、これまで筋による熱生産はもっぱら赤筋が脂質を代
謝することで担っていると考えられてきました。
ところが、この考え方は一変しつつあります。
そのきっかけは、脱共役タンパク質-3(UCP-3)というタンパク質の発見です。
UCP-3は、有酸素性代謝を改変し、脂質や糖質のもつエネルギーをすべて熱に変えてしまうとい
う、いわば「脂肪燃焼タンパク質」です。
そして、このUCP-3はタイプIIa、すなわち「ピンク筋」に多量に発現することがわかりました。
したがって、「赤筋は主に身体活動中や姿勢維持中に脂肪を使って副次的に熱を生産し、ピンク
筋は完全休息中や睡眠中にも脂肪を使って積極的に熱を生産する」と考えられます。
中-高強度のレジスタンストレーニングは「ピンク筋」を増やし、発達させますので、体脂肪減量に
も効果的といえるわけです。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース159号(2003年6月発行)より転載

清水広明選手

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Kentaiが応援している、ボルダリングの清水広明選手がSASUKEでデモンストレーションを
行われたそうです。
今後のご活躍にも期待してます!

Kentai 五反田

高くジャンプするための生理学

ジャンプ高と離地速度
163号で、「ジャンプ高は重心の離地速度で決まる」と述べましたが、もう少し詳しく説明しましょ
う。
高校時代の物理を思い出してください。
重心(質量M)が、鉛直方向の速度Vで離地したときの運動エネルギーEkは、Ek = 1/2 MV2 にな
ります。
このエネルギーが重心の位置エネルギーEpと等しくなったところがジャンプの最高点となります。
Ep = MgH(gは重力加速度、Hは高さ)ですから、1/2 MV2 = MgH、すなわちH = (1/2g)V2 となり
ます。
したがって、例えば離地速度が10%増えればば、ジャンプ高は速度の二乗に比例しますので、
21%増えるといえます。

高い離地速度を得るための筋力
これも163号で述べましたが、高い離地速度を達成するためには、大きな加速度が必要です。
さらに、(加速度)=(力)/(質量)ですので、質量すなわち体重に比して、いかに大きな力を発揮
できるかが重要となります。
実際のジャンプ動作で、身体が地面に対して発揮する力(地面反力)を測定してみると、この力は
250-350 kg重(体重の5-6倍)にもなることがわかります。
しかも典型的なジャンプでは、一旦しゃがみ込んでから跳び上がる瞬間まで、常にほぼ同じレベ
ルの力が発揮され続けますので、重心は上方向に加速され続け、離地の瞬間に最大速度が達
成されることになります。

助走の生理学的意味
これらのことから、高いジャンプを達成するための基本的な戦略は、「いかに大きな筋力を発揮し
て、重心を上方向に加速し続けるか」ということになります。
そしてこれは、まず現在持っている膝・股関節伸展の最大筋力で規定されます。
一方、工夫次第で、筋自体のもつ通常の筋力発揮能力を超えたジャンプをすることも、生理学的
には可能です。
それは、当たり前のようですが、助走を利用することです。
助走には2つの意味があります。
ひとつは、走ることで、並進方向の運動エネルギーが生じます。
このエネルギーは上述と同様、並進方向の速度の二乗に比例します。
助走に「急ブレーキ」をかけると、このエネルギーの多くが筋に吸収されます。
このとき、筋は力を出しながら引き伸ばされる、すなわち伸張性収縮の状態になります。
筋や腱が「バネ」のようにはたらき、並進方向の運動エネルギーを弾性エネルギーとして蓄えてく
れれば、これを次のジャンプ動作、すなわち鉛直方向の運動エネルギーに加算できることになり
ます。
その分、高いジャンプが可能になると考えられます。
もうひとつは、筋自体の生理学的特性に関連します。
筋を一旦引き伸ばしてから(伸張性収縮)、一定の長さに保ったり、折り返し短縮させたりすると、
筋力発揮能力やパワー発揮能力が増大します。
これを「伸張による増強効果」(ポテンシエーション)と呼びます。
これらの両方のメカニズムによって、助走をすれば高く跳べますし、ベンチプレスなどでも、一旦
バーベルを下ろしてから上げることで、より大きな重量が上がることになります。

助走には最適速度がある?
エネルギーの理論から言えば、助走が速ければ速いほど大きな並進方向の運動エネルギーを
得られ、ジャンプ高も増すはずです。
しかし、走り高跳びなどの競技を見ると、助走が速いほどよいというわけではなく、最適の速度が
ありそうに思えます。
以前、私の研究室で、カエルとヒトの筋を対象とし、上記の「伸張による増強効果」を詳しく調べた
ことがあります。
その結果、最大の増強効果を得るためには最適の伸張速度があり、これより速くても遅くても増
強効果が低減してしまうことを発見しました(Takarada, Ishii ら,1997,1998)。
その理由は、筋をあまりに急激に伸張すると、筋の収縮装置がもちこたえきれずに「ギブアップ」
してしまうためと考えられます。
したがって、やはりジャンプの助走には、筋生理学的にみても最適速度があると考えられます。

プライオメトリック・トレーニング
トレーニングの分野では、ジャンプ能力を高めるために、ドロップ・ジャンプなどのプライオメトリッ
ク・トレーニングが効果的とされています。
これは、助走・ブレーキから切り返してジャンプするときに、集中的に筋力を発揮するための神経
系のはたらきが向上するためと解釈されています。
確かにこれは、ある一面では正しいといえます。
しかし、伸張による筋力の増強効果という観点から、「筋の能力を最大限に増強するようなブレー
キのかけ方を体得するトレーニング」という見方もできるのではないかと思います。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース165号(2004年6月発行)より転載

栄養セミナー

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先日、大学のアメリカンフットボール部で、栄養とサプリメントのセミナーを行いました。
これからもKentaiサプリメントを多くのアスリートにご利用いただけるよう、提案していきます。

Kentai 江崎

動作のスピードと筋力

以前、プロ野球のトレーナー・ドクターミーティングに招かれ、1)スポーツパフォーマンスと筋力の
関係、2)コンディショニングでの筋力の重要性、3)アスリートのための筋力トレーニングの工夫、
の3点について講演をしました。
これらの中で、改めてスポーツパフォーマンスと筋力の関係を考えてみると、これを体系的に分
析した書物や文献がきわめて少なく、十分に理解されていないことに気付きます。
そこで今回はやや基礎的なテーマになりますが、スポーツパフォーマンスにおいて重要となる動
作スピードと筋力の関係についてお話しします。

スピードを決める要因
多くのスポーツでは、まず動作のスピードが筋力より重要になります。
例えば、野球のピッチャーではボールを離す瞬間の指先のスピード、バッターではボールを捉え
る瞬間のバットのスピード、ジャンプ系競技では離地の瞬間の重心のスピードがそれぞれ、球
速、球の飛距離、ジャンプ高などを規定する第1の要因になります。
これらは物理法則に基づいています。
一方、現場では長い間、スピードが何で決まるかがよく理解されていなかったために、「スピード
と筋力は別物」といった誤解を生じてきた傾向があります。
結論から述べると、動作のスピードは、1)筋力、2)筋力発揮の仕方、3)筋のスピード、4)神経の
協調性、5)筋と骨の長さ、の5つの要因で決まります。
このうち、1)―4)はトレーニングによって改善可能な要因と考えられ、以下に順を追って詳述しま
す。

筋力と加速度
すべての動作は「速度ゼロ」から始まりますので、高いスピードを達成するためには、大きな加速
度が必要です。
物理法則から、(力)=(質量)×(加速度)ですので、(加速度)=(力)/(質量)となります。
したがって、腕とボール、腕とバット、全身などの質量に対して、どれだけ大きな筋力を発揮でき
るかが、上にあげたそれぞれの動作での加速度を決めるということになります。
実際、ジャンプ動作では、(地面反力)/(体重)が大きいほど跳躍高が高くなります。

加速のタイプ:弓型とピストル型
ところが、単に測定上の最大筋力が増えることが即スピードにつながるわけではなく、筋力発揮
の仕方も重要になります。
例えば、力の上限は低くとも、なるべく長いストロークで加速を続けられれば、最終的な速度は高
くなります。
これを「弓型の加速」ということができます。
ピッチャーで「球離れが遅い方が良い」といわれるのはこのためです。
一方、短い時間の間に爆発的な筋力を発揮して加速度を生む方法があり、「ピストル型」の加速
といえます。
こちらには,筋力が高いだけでなく、瞬時に大筋力を発揮する(バリスティックな筋力発揮)能力が
必要です。
しかしここで重要なことは、どちらの場合にも筋力が基盤となっている点で、トレーニングによって
筋力発揮の上限を高めることは、「弓型」の場合には弓と蔓の強度を高めることに、「ピストル型」
の場合には薬莢の火薬を増やすことに相当します。

加速を維持する能力と力―速度関係
上記の2つのタイプの加速のうち、どちらが重要かは、スポーツのタイプや選手の個性に応じて
異なってきます。
しかし、いずれの場合にも、動作の終盤では、「すでに早い速度で動いている状態でさらに加速
のために筋力を上乗せする」必要が生じます。
ここで問題となるのが、「筋のスピード」です。
筋には一般に、その短縮速度が増大するほど力が低下するという特性があります。
この関係を力―速度関係と呼びます。
究極的な筋のスピードは、力=0になったときの速度で決まり、これを最大(無負荷)短縮速度
(Vmax)と呼びます。
ひとたびVmax に等しい速度になってしまうと、もはや筋はさらに加速するための筋力を発揮でき
ません。

筋自体の最大スピードは変わらない?
ところが、これまでヒト生体内でVmax を測定することが困難であったため、筋のスピードと動作
スピードの関係には不確かな点が多く残されてきました。
そこで私たちの研究室では、生体内でVmaxに近い値を測定するために「サーボ制御式ダイナモ
メーター」(Yamauchiら、2003)と「スラックテスト型ダイナモメーター」(佐々木と石井、2004)とい
う2種の装置を開発しました。
これらの装置を用いて脚・股関節伸展と足関節底屈のVmax を測ったところ、男女の間でも、若
者と高齢者の間でも、ほぼ一定であることがわかりました。
したがって、日常生活やスポーツ動作での若者と高齢者のスピードの違いは、主に筋力の違い
によるものと考えられます。
このことは、ヒト筋のバイオプシーから得た単一筋線維のVmax が加齢によって変化しないという
最近の知見(Trappeら,2003)とも合致しています。

神経系の関与
以上から、動作スピードにはまず筋力が重要であることになりますが、一方、トレーニングによっ
てVmax が若干向上することもわかってきています。
これにはおそらく、共同筋間の協調性の向上や、拮抗筋の活動の低減など、神経系の機能の変
化が関与しているものと想像されますが、この点については、もう少し研究が進んでからご紹介し
ましょう。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース163号(2004年2月発行)より転載

2種類の「マラソン・マウス」:持久力を決める物質をめぐって

前回、筋肥大の鍵を握る物質のひとつであるミオスタチンをめぐる最近の研究動向をご紹介しま
した。
一方、全身持久力の鍵を握る物質はないのでしょうか。
可能性のあるものとして、エリスロポエチン(EPO)やアンギオテンシン変換酵素(ACE)などを過
去にご紹介してきましたが、これらは、筋肥大における成長ホルモンやテストステロンなどと同
様、どちらかというと補助的なはたらきをするものといえます。
ところが、最近になって、有力な候補が相次いで2つ発見されました。
PPARδとHIF-1αという難解な名前のタンパク質ですが、いずれも遺伝子のはたらきを調節する
物質です。
今回はこれらの物質と持久力の関係についてお話ししましょう。

筋線維のタイプ変化に着目
ご存じの通り、筋は遅筋線維(タイプI線維)と速筋線維(主にタイプIIa線維とタイプIIb線維)からで
きています。
これらの筋線維の持久力は、I>IIa>IIbの順になります。
タイプIは有酸素性代謝にすぐれていて、脂質を代謝する能力が高く、また有酸素性代謝に必要
な酵素や色素タンパク(ミオグロビンやチトクローム)を多量にもつため、赤みをおびています。
動物に長期の持久力トレーニングをさせると、筋線維のタイプは IIb→IIa→Iの方向に変化します。
ヒトではIIa→Iの変化はとらえられていませんが、少なくともIIb→IIaの変化は起こります。
従って、こうした筋線維のタイプ変換に直接関わる物質が、持久力の鍵を握っているものと想像
されます。

遅筋線維を増やすPPARδ
Evansらのグループ(2004)は、PPARδというタンパク質が脂肪細胞の脂質代謝を活性化するこ
と、遅筋線維に多く含まれることなどに注目し、マウスを用いてさまざまな実験を行いました。
まず、遺伝子組み替えによって、すべての筋線維で常にPPARδが多量につくられるマウスを作っ
たところ、タイプI線維の多いマウスになりました。
マウスはそもそもタイプII線維の多い動物ですが、この組み替えマウスでは、全身の筋肉が赤み
をおびて見えるほどです。
同時に、タイプI線維に特徴的なタンパク質(遅筋型トロポニン、ミオグロビン、チトクロームなど)の
量も著しく増加しました。
これらのことから、PPARδは,筋線維を遅筋型の方向に変化させる物質であることがわかりま
す。

走能力が倍増する
次に彼らは、通常のマウスと遺伝子組み替えマウスの持久力を比べました。
疲労困憊に至るまでトレッドミル走をさせると、走行時間、走行距離のいずれについても、遺伝子
組み替えマウスは通常のマウスの約2倍の値を示しました。
従って、遺伝子組み替えによって「マラソン・マウス」ができたといえます。

肥満を防ぐ効果も
有酸素性代謝能力が高いことは、脂質代謝能力が高いことにつながります。
またタイプIIb→IIaの変化が起こると、「脱共役タンパク質」(UCP-3)が増え、より多くのエネル
ギーを熱に変えるようになります。
実際、Evansらは、上記の遺伝子組み替えマウスが、通常のマウスに比べ、体重も体脂肪量も著
しく少ないことを示しました。
一方、こうした体重と体脂肪量の低下が、持久走のパフォーマンスにどのような影響を与えてい
るかが不明であり、この点はやや問題として残るところです。

もうひとつの物質:HIF-1α
時期を同じくして、Johnsonらのグループ(2004)は、全く別の「マラソン・マウス」を作ることに成
功しました。
彼らは、HIF-1αというタンパク質の遺伝子をもたないマウス(ノックアウトマウス)を作り、このマウ
スが走運動、遊泳運動のいずれでも高い持久力を示すことを報告しました。
HIF-1αのはたらきについては不明の点も多いのですが、低酸素などの環境下で、筋線維の無酸
素性代謝活性を高めるものと考えられています。
EvansらとJohnsonらの研究から、筋線維には、有酸素性代謝を高めるスイッチ物質(PPARδ)
と、逆に無酸素性代謝を高めるスイッチ物質(HIF-1α)があり、これらの物質の量を操作すること
で、持久力を高めることが可能であることを示唆しています。

活性酸素による副作用も
Johnsonらの研究では、持久運動後の筋の変化についても調べられています。
その結果、HIF-1αノックアウトマウスでは、確かに1回のテストでの持久力は高いものの、運動後
数日にわたって著しい筋損傷と持久力の低下が持続することがわかりました。
これはおそらく、有酸素性代謝の昂進に伴う活性酸素種の生成によるものと考えられます。
トレーニング以外の方法で人為的に有酸素性代謝を向上させると、抗酸化能力は発達しないの
で、このような副作用が生じてしまうのでしょう。

ドーピングへの可能性
これらのマウスの実験は、遺伝子操作によるものですので、「遺伝子ドーピング」を行わない限
り、ヒトに直ちに応用することはできないでしょう。
しかし、Evansらは、GW501516というPPARδ作用薬(同様の作用をする薬物)を餌に混ぜて通
常のマウスに与えたところ、遺伝子組み替えを行った場合と同様の効果が得られたことも報告し
ています。
これについては、近い将来ドーピングに悪用される危険性もあると思われます。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース167号(2004年10月発行)より転載

球春到来

球春到来.jpg

野球ファンにとって、うれしい季節になりました。
息子の所属するチェリーズもシーズンが始まりました。
新しい背番号背負った選手達がグランド狭しと駆けまわります。

Kentai 上野俊彦

【おすすめ】 スポーツサプリ

筋肉がつく人,つかない人:(1)「スーパーベイビー」が暗示するもの

以前、このコラムで「筋肉質」の素質を決める遺伝子のお話しをしました。
当時は動物を対象とした研究からの類推でしたが、近い将来ヒトでも同様のことが発見されるだ
ろうと予言したと思います。
それから随分年月が経ちましたが、2004年になって、注目すべき研究が2件報告されました。
今回はそのうちの1件について解説いたします。

ドイツの「スーパーベイビー」
6月25日(2004年)の新聞に、「筋肉量が2倍の赤ちゃん発見」という記事が掲載されました。
この記事は同24日に「New England Journal of Medicine」(電子版)に発表されたSchuelkeら
の報告に基づくものです。
ドイツで発見されたこの赤ちゃん(男子)は、誕生時から顕著に筋量が多く、生後6日の時点で、
大腿部の筋断面積が平均値に比べて2倍以上ありました。
生後7ヶ月での写真を見ると、大腿四頭筋、腓腹筋、殿筋など、ちょとしたビルダーのようです。
4歳半になった現在では、両手にそれぞれ3kgのダンベルを持って立ち上がれるそうです。

原因はミオスタチンの変異
この赤ちゃんの遺伝子を調べたところ、ミオスタチンという成長因子の遺伝子に変異があることが
わかりました。
ミオスタチンについては、これまで再三ご紹介してきた通り、筋の成長を強く抑制する成長因子で
す。
その遺伝子に変異が起こり、正常なミオスタチンがつくられなくなると、筋量がウシでは約30%増
しに、マウスでは2‐3倍になることがわかっています。
また、以前ご紹介したように、ミオスタチンのはたらきを阻害する抗体を注射すると、運動をしなく
とも筋肥大が起こります。
赤ちゃんでは、このミオスタチンの遺伝子に、DNAの塩基(A,G,C,Tの4種)がGからAへと置
換している変異が一カ所だけ見つかりました。

筋肥大の鍵を握るミオスタチン
このミオスタチンは、筋肥大の「スイッチ」に関わるキーファクターのひとつであることがわかってき
ました。
筋線維が肥大するときには、まず筋線維の周囲にある「筋サテライト細胞」という細胞が分裂・増
殖する必要があります。
その分裂・増殖のスイッチを「オフ」にするのがミオスタチンで、逆に「オン」にするのが肝細胞増
殖因子(HGF)だと考えられるようになってきています。
実際、私たちの研究グループは、トレーニングによって肥大した筋でミオスタチンの生成量が減少
し、HGFの生成量が増加していることを見出しました。

代々の「力持ち」家系
さてこの赤ちゃんの母親は、24歳の元プロスポーツ選手です。
残念ながら父親の情報は公開されていませんが、母親の家系は、少なくとも3代にわたり評判の
「力持ち」家系で、赤ちゃんのおじいさんは舗道の縁石を素手で引き抜くことができたそうです。
同様の素質をもった近親者が少なくとも5名いると記載されています。

なぜ発見が遅れたか?
冒頭にも述べたとおり、ミオスタチン遺伝子の変異がヒトの筋量を左右することは、5年以上前に
多くの研究者が予見しました。
以来、この点について多くの研究もなされてきました。
実際、昨年までに5種の変異が報告されましたが、いずれも残念ながら筋量や筋力にはあまり大
きな影響を与えないものばかりでした。
今回の赤ちゃんの場合、注目すべきは遺伝子の変異の場所です。
遺伝子には、タンパク質の直接の設計図になる「エクソン」という領域と、最終的に切り取られる
「余白」のような、「イントロン」という領域があります。
ミオスタチンの遺伝子は、3つのエクソンの間に2つのイントロンが入り込んでいる構造をしていま
す。
当然、多くの研究者の注目はエクソンに集まり、イントロンはなかば無視されてきました。
ところが、この赤ちゃんの遺伝子では、イントロンに変異があったのです。
変異の結果、イントロンに相当する部分が正しい位置で切り取られず、正常なミオスタチンがつく
られないことがわかりました。
これは、ある意味では盲点であったといえるでしょう。

1/200以下の確率だが・・・
遺伝子は、母親から受け継いだものと、父親から受け継いだもののペアでできています。
このうち、変異などが一方のみにある場合を「ヘテロ接合」、双方にある場合を「ホモ接合」と呼び
ます。
この赤ちゃんは「ホモ接合」、母親は「ヘテロ接合」です。
従って、父親にも同様の変異があったことが類推されます。
母親はヘテロ接合であったため、目立つほど筋肉質ではないようですが、それでもプロ選手。
おじいさんもそらくヘテロ接合ですが評判の力持ち。
赤ちゃんはホモ接合であったため、生まれたときから注目を浴びるほどになりました。
Schuelkeらの調査によれば、この変異が遺伝子に起こる確率は1/200以下だそうです。
従って、ヘテロ接合は200人に一人以下、ホモ接合は4万人に一人以下の確率であろうと類推さ
れます。
この数字、少ないと見るか多いと見るか。
オリンピックに出場できる確率と対比すると、決して小さな数字ではないようにも思えます。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース166号(2004年8月発行)より転載

ジャンプ台

ジャンプ台.jpg

以前、北海道の大倉山ジャンプ競技場で撮影した写真です。
ジャンプ台の頂上からは、着地点が遠くに、小さく見えました。

Kentai  五反田

【おすすめ】 バイオアクティブホエイプロテイン

春.jpg

街中で花が咲き始め、春の気配を感じます。
寒緋桜という初春に咲くサクラを見つけました。

Kentai 小林

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ストレッチングは運動パフォーマンスを低下させる?

前回,筋力トレーニング、特に爆発的な筋力発揮を高めるためのプライオメトリック・トレーニング
が、意外にも中・長距離走のパフォーマンスを高めることをお話ししました。
一方、ここ1,2年の研究により、静的ストレッチングが筋力発揮を低下させてしまうことが示され
ています。
「運動やトレーニングの前に入念なストレッチ」は、いわばセオリーになっていますので、このことも
一般的には意外な事実ということになるでしょう。
ただし,これを解釈するためには注意が必要で、直ちに「今まで行ってきたストレッチを止めた方
がよい」ということにはなりません。

ストレッチングの一般的効果
ストレッチングには、リラックスしてゆっくりと筋を伸ばす静的ストレッチング、反動動作を利用する
バリスティック・ストレッチング、筋力発揮を伴うダイナミック・ストレッチングなど、さまざまなものが
あります。
これらに共通した効果として、筋の余分な緊張を除き、関節可動域(ROM)を広げることが上げら
れます。
体内のほとんどの筋は、運動をしていないときでも多少の緊張を保っています。
長時間同じ姿勢でいると筋の緊張が徐々に高まり、ROM が低下してきます。
こうした状態では、なめらかな動きができなかったり、急に関節を大きく動かすことで障害が発生
したりしますので、ストレッチングによって筋の余分な緊張を取り除くことは当然重要と考えられま
す。

静的ストレッチングによる筋力低下
ところが最近、3―10分の静的ストレッチングの前後で筋力を測定すると、最大挙上負荷、等速
性筋力などの動的筋力(McLellan ら、2000;Cramer ら、2004など)、等尺性筋力および筋力発
揮速度(Nelson ら,2000など)がいずれも低下してしまうことが示されました。
筋力低下は最大で約30%にも及び、その効果はストレッチング終了後45分間ほど持続するよう
です。
また、筋力低下と平行して、筋の電気的活動も低下することから(Fowles ら、2000)、この筋力低
下は、筋線維の動員能力の低下によることが示唆されます。
筋力・パワー系競技の選手にとってこれは大問題です。

筋力低下のメカニズム
静的ストレッチングによる筋力低下のメカニズムについては、およそ次のように考えられていま
す。
筋には、筋紡錘という受容器があり、筋の長さを検知しています。
筋紡錘が伸張されると、感覚信号が脊髄や脳の中枢神経系に送られますが、このとき、脊髄中
にある運動神経(α-運動神経)の活動を増強し、伸張された筋の活動を高めるように作用します。
これを伸張反射といいます。
筋が伸張されると、これに抗して大きな筋力を意識しなくとも瞬時に発揮できるような仕組みで
す。
一方、筋紡錘の内部にも、錘内線維と呼ばれる筋線維があり、運動神経による支配を受けていま
す(γ-運動神経)。
錘内線維は、筋紡錘の感度を調節していて、γ-運動神経が活動すると筋紡錘の感度が上がりま
す。
最大筋力を発揮するときには、αとγの両方の運動神経が活動し、筋紡錘からの感覚信号によっ
てさらに筋力発揮が増強される仕組みがはたらきます。
これをγ-α共役と呼びます。
静的ストレッチングにより、筋紡錘の感度が低下し(脱感作)、その結果、筋の緊張は低減するも
のの、γ-α共役がうまくはたらかなくなって筋力も低下する可能性があります。

体の「固さ」と障害
それでは、障害とストレッチングの関連はどうでしょうか。
関節可動域(ROM)の大きさとスポーツ障害の関係については、多くの疫学的研究があります。
それらをまとめると、「ROMが極端に狭い場合には障害の原因になるが、必ずしもROMが広いこ
とが障害を防ぐ要因にはならない」といえると思います。
逆に、ROMが広すぎると、関節の「ゆるさ」につながり、障害の危険性が増すとの報告もありま
す。
体操競技のように、ROMが直接的に重要となる競技もありますので一般化はできませんが、そも
そも関節の「ゆるい」傾向のある選手にとっては、ストレッチングのやり過ぎは問題となるでしょ
う。

アクティブ・ウオームアップ
これに対し、ジャンプやジョギングなどの「アクティブ・ウオームアップ」を10分ほど行うと、ROMが
広がり、筋力が低下せず、筋力発揮速度が向上することが示されています(Rosenbaumら、
1995)。
こうした効果には、筋活動と筋の伸張(ストレッチ)が組み合わされていること、筋の循環が活性
化し、筋温も上昇すること、などの要因が関連しているものと思われます。

どうしたらよいのか?
このように、運動やトレーニングに静的ストレッチングをどのように取り入れて行くかは、スポーツ
生理学の分野では新たな課題になってきています。
どのようにしたらよいのか、具体的な回答はまだありません。
現時点で言えることは以下のようになるでしょう。
:最大パフォーマンスを発揮する直前には静的ストレッチングは行わない;やみくもに静的ストレッ
チングに長時間を費やすのではなく、静的ストレッチング→ダイナミック・ストレッチング→アクティ
ブ・ウオームアップのように、段階的に筋力発揮のための準備を行ってゆく必要がある。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース169号(2005年2月発行)より転載

中・長距離走になぜレジスタンストレーニングが必要か

去る11月27日(2004年)に,「レジスタンストレーニングの変遷と現状」と題したシンポジウムが行
われました。
演者はシドニー工科大の A. Murphy 博士、東海大の有賀誠司氏と私の3名でしたが、中でも
Murphy 博士の「プライオメトリック・エクササイズの進歩と未来への方向性」という発表はたいへ
ん興味深いものでした。
プライオメトリック・トレーニングは従来、スプリント/ジャンプ系競技のための専門的トレーニング
とされてきましたが、彼らのグループは最近の一連の研究から、これが中・長距離走のパフォー
マンスを高める効果があることを示しました。
そこで今回は、彼らの研究を足がかりにして、持久走パフォーマンスとレジスタンストレーニング
の関連について考えてみましょう。

全身持久力と持久走パフォーマンス
中・長距離走を含む持久的競技のパフォーマンスには、まず呼吸・循環・代謝機能が深く関わりま
す。
これらの機能のうち、比較的容易に測れる指標として、最大酸素摂取量(VO2max)と乳酸閾値
(LT)があります。
V02maxは呼吸・循環系によって作業筋に酸素を供給することのできる上限値を示します。
一方、運動強度を上げていくと、やがて有酸素性代謝のみではエネルギー供給が間に合わず、
無酸素性代謝を併用しなければならなくなるために乳酸生成が増加(血中乳酸濃度も増加)し始
めますが、丁度このときの運動強度をLTと呼びます。
これまで多くの研究が、1500m走からマラソン競技に至るまでの持久走パフォーマンスと、実験
室内で測定したVO2maxおよびLTの間に強い相関関係があることを示してきました。

ランニング効率
一方、実際の走パフォーマンスには、上記の生理学的要因に加え、走フォームの善し悪しなど、
さまざまな要因が関与してきますので、V02max やLTが同じでも、走タイムのよい人、悪い人とい
った幅が出てきます。
こうした付加的な要因のうち、強い影響力をもつものにランニングのエネルギー効率(ランニング
効率)があります。
ランニング効率は、酸素摂取量当たりの走スピードで定義されます。
したがって、VO2max が同じでもランニング効率の良い人ほど持久走パフォーマンスは高くなると
考えられます。

プライオメトリック・トレーニング
プライオメトリック・トレーニングは、生理学的には筋が活動状態を維持したまま伸張・短縮するよ
うに行うトレーニングといえます(伸張―短縮サイクル:SSC)。
実際のエクササイズには、自重を利用したジャンプ系のもの(デプスジャンプやバウンディング)
から、マシンやメディシンボールなどを利用したSSCトレーニングまで、さまざまなものがあります。
いずれの場合にも、伸張性筋収縮により急減速し、切り返して短縮性収縮により急加速するとい
う動作が基本となりますので、瞬発的なパワー発揮のための神経・筋機能の改善に効果的とさ
れています。
プライオメトリック・トレーニングが中・長距離走パフォーマンスを高める Murphyら(2003)は、17
名の中・長距離ランナーを対象として、6週間の漸増的プライオメトリック・トレーニングの効果を調
べました。
その結果、垂直跳びなどのパワー系機能が向上したばかりでなく、3 km 走のタイムが平均で約
16秒(距離にして約80m)向上しました。
一方、VO2max および LTには変化はありませんでした。
しかし、同一の最大下走速度での酸素摂取量は低下しました。
これらの結果から、プライオメトリック・トレーニングは、全身持久力に関わる呼吸・循環・代謝機能
には効果を及ぼさないものの、ランニング効率を高めることで走パフォーマンスを改善することが
示されました。

効果のメカニズムは?
プライオメトリック・トレーニングのこうした効果には、少なくとも2つの要因が関与していると思わ
れます。
ひとつは神経系のはたらきです。
プライオメトリック・トレーニングを行うと、たとえばホッピング動作などでの接地時間が短縮されま
す。
これは、接地の直前に筋活動がよりすばやく、同期されて起こるようになるためと考えられます。
2番目は筋の「固さ」です。
上記の研究では、トレーニング後に脚筋群の「スティフネス」、すなわち受動的な「固さ」が増大し
たことも示されました。
この受動的「固さ」には、伸張反射などの神経活動も混在している可能性がありますが、これらの
2つの要因はいずれも、接地時にアキレス腱などの弾性要素をより強く引き伸ばすように作用しま
す。
すると、着地に伴うエネルギーがより効率的に弾性エネルギーとして蓄えられ、次のジャンプに利
用されると考えられます。
その極端な場合が以前にご紹介した「カンガルーのジャンプ」といえるでしょう。

基礎的トレーニングの重要性
プライオメトリック・トレーニングは、外観上の負荷に比べはるかに大きな筋力発揮を伴う場合が
多く、容易に行えるものではありません。
したがって、中・長距離選手の場合にも、基礎的レジスタンストレーニングによって神経・筋機能
のポテンシャルを十分に高めた上で、段階的にプライオメトリック・トレーニングへと移行すること
が、安全性と効果の両面からみて重要と思われます。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース168号(2004年12月発行)より転載

ゴールドジムさいたまスーパーアリーナ

スーパーアリーナ01.jpg スーパーアリーナ02.jpg

さいたま新都心のゴールドジムさいたまスーパーアリーナがリニューアルオープンしました。
シャワー、ラウンジがとても綺麗になり、落ち着いた雰囲気になりました。
トレーニングスペースの天井の高さは凄い!のひとことです。

Kentai 上野俊彦

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ローカーボそれともローファット?  2)脂肪食の問題点

前回、低糖質ダイエット(アトキンスダイエット)の効果についてお話しし、「短期間で脂肪を落とす
には低糖質、長期間で脂肪を落とすには低脂質」と結論づけました。
低糖質ダイエットは、カロリー過剰となるほど脂肪を摂取してもよいというものではありませんが、
総エネルギー摂取量のうち約50%が脂肪ですので、相対的には高脂肪ダイエットといえるでしょ
う。
またこのダイエットは、あえて脂肪摂取を控えないことにより脂質代謝能力を改善するという点に
特徴があります。
そこで今回は、「脂肪の摂り方」の方に着目してみましょう。

高脂肪食が脂肪細胞に及ぼす効果
脂肪が小腸で消化・吸収されると、十二指腸から「消化管抑制ペプチド」(GIP)というホルモンが
分泌されます。
このホルモンは、胃酸の分泌や蠕動運動を抑制し、消化活動を減速して余剰のエネルギー摂取
を抑えます。
脂肪食の「腹持ち」がよいのはこのためです。
一方、GIPはさまざまな組織にはたらき、リポタンパクリパーゼ(LPL)という酵素の活性を高めま
す。
この酵素は、血液中の中性脂肪(リポタンパク)を脂肪酸とグリセロールに分解し、細胞が取り込
めるようにします。
したがって、各組織での脂質代謝を改善する効果をもつといえます。
ところが、脂肪細胞もGIPの作用によって同様に血中の中性脂肪を吸収し、太ってしまいます。
実際、遺伝子操作によって作ったGIPのないマウスは、高脂肪食でも太らないことが報告されて
います。
脂肪を制限しないダイエットでは、おそらくこのGIP活性が徐々に上昇するため、長期的にみると
ダイエット効果が低下してくるものと考えられます。

高脂肪食が頭のはたらきを悪くする?
最近、動物実験から、高脂肪食によって頭が悪くなる可能性のあることが示されました。
Granholm(2004),Morleyら(2004)はそれぞれラットとマウスに、通常の餌と、カロリーが同じで
脂肪の割合の高い餌を与え、迷路学習の効果を比べました。
その結果、高脂肪食を与えられた場合、ラットでもマウスでも学習効果が低下しました(記憶力が
悪くなった)。
そのメカニズムは不明ですが、脂肪摂取量そのものより、摂取した脂肪の「質」に問題がある可
能性があります。

植物性脂質でも安心できない
従来、「動物性脂肪は体に悪く、植物性脂肪は体によい」といわれます。
事実、動物性脂肪を過剰に摂取すると、血中の中性脂肪が増え、動脈硬化や心筋梗塞の原因と
なります。
中性脂肪には、動脈硬化を促進する「低密度リポタンパク」(LDL)と、逆にこれを抑制する「高密
度リポタンパク」(HDL)があり、動物性脂質がLDLとHDLの両方を増やすのに対して、植物性脂
質はHDLの方をより増やすとされています。
しかし、植物性だからといって安心はできません。
元来植物性であった脂質の中にも、「トランス脂質」という脂質を含むものがあり、これがもっぱら
LDLを増加させることがわかりました。

シス脂質とトランス脂質
脂肪(脂質)は脂肪酸とグリセロールからできています。
脂肪酸には、炭素と炭素の間に「二重結合」という結合がなく、安定した構造をもつ「飽和脂肪酸」
と、二重結合があり不安定な構造の「不飽和脂肪酸」があります。
飽和脂肪酸をもつ脂質は、全体として分子の鎖がまっすぐで、互いの方向が揃いやすいために、
常温では密にパックされやすく固体になります。
動物性脂肪は主にこちらです。
一方、不飽和脂肪酸をもつ脂質は、分子の鎖が途中で折れ曲がっているために方向が揃わず、
常温でも液体です。
植物性脂質は主にこちらです。
ところが、人間は植物性脂質の二重結合を自在に飽和結合に変え(還元する)、常温でやや固い
マーガリンにしたり、「日持ちのよい油」にしたりします。
しかし、この加工過程で、一旦飽和結合になったものが、前とは違った形で再び二重結合に戻る
ことがあります。
本来の二重結合は、脂肪酸の分子を折り曲げるようにできていて、これを「シス型結合」といいま
す。
これが、分子をまっすぐな形に維持するような「トランス型結合」に変わってしまう場合があり、こう
してできた脂質をトランス脂質と呼びます。

トランス脂質が細胞機能を損なう
トランス脂質は加工の工程で意図せず出来てしまう不飽和脂質です。
問題は、このような脂質が天然には少ないという点にあります。
細胞膜を構成するリン脂質は一般に、1本の飽和脂肪酸の鎖と1本の不飽和脂肪酸(シス型)の
鎖をもちます。
このおかげで、細胞膜は適度の固さと、液体としての性質(「流動性」)を併せもつことができま
す。
したがって、シス型の代わりにトランス型の不飽和脂肪酸が入ってくると、膜の流動性が低下し、
細胞の機能が損なわれてしまいます。
ガンの原因になるという指摘もあり、欧米ではこのトランス脂質が大きな問題になりつつありま
す。
上述の高脂肪食による学習効果の低下は、餌中のトランス脂質によって神経細胞の機能が低下
したことも一因ではないかと考えられます。
今回の結論として、長期的な高脂肪摂取は控えることと、加工をしていない脂肪の摂取を心がけ
ることが、ダイエットのためにも健康のためにも重要といえるでしょう。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース171号(2005年6月発行)より転載

マキバオー

マキバオー.jpg先日、格闘技道場パラエストラ松戸10周年記念イベントに参加しました。
そこで、「みどりのマキバオー」の作者、つの丸さんにお会い出来ました。
作品の大ファンなのでとても感激しました。

Kentai上野俊彦

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ローカーボそれともローファット?  1)低糖質ダイエットの効果

年中行事のように,「夏に向けてのダイエット特集」の取材が来る季節になりました。
これまで長い間、減量のための食事法として、「糖質(炭水化物)を減らすべきか脂質を減らすべ
きか」という問題が議論されてきました。
そこで今回と次回にわたり、低糖質ダイエットと低脂質ダイエットについて、それぞれの効果や問
題点などについて考えてみることにしましょう。

ダイエットとエネルギー収支
まず、肥満と減量について、エネルギー論的に考えてみます。
物理学の基本法則に「エネルギーは形を変えても消滅はしない」(エネルギー保存則)というもの
があります。
これに則れば、体脂肪の蓄積はあくまでもエネルギー摂取がエネルギー消費を上回っていること
が原因であり、減量するためにはこの関係を逆にすればよいということになります。
当然、生理学的にもこれは真実です。
栄養学の分野でも、まず基本として摂取カロリーと消費カロリーのバランスを正すことが重要とさ
れているはずです。
この場合、摂取する食品が糖質(4 kcal/g)であろうが脂質(9 kcal/g)であろうが、カロリーという
数字にすれば全く違いはありません。

アトキンスダイエットとは
一方、総摂取エネルギーよりも栄養素の量的バランスが重要であるとする考えもあり、その代表
が「アトキンスダイエット」といえます。
これは、故R. Atkins 博士が「アトキンス博士のダイエット革命」(1972)、「アトキンス博士の新ダ
イエット革命」(1999)で紹介した方法です。
その基本戦略は「総エネルギー摂取量を考慮するのではなく、選択的に糖質の摂取を減らす」こ
とにあるといえるでしょう(基本的比率例、糖質:タンパク質:脂質=2:3:5)。
原理的には、「代謝されやすい糖質を制限し、代謝されにくい脂質を制限しないことが、最終的に
脂質代謝を高めることにつながり、体脂肪を減らす」とされています。
また、「糖質を摂取することが、余剰の糖質からの体脂肪の合成を助長する」としている点は、「低
インスリンダイエット」と一脈通ずるところがあります。

タンパク質のエネルギー獲得効率
アトキンスダイエットは、数万を超える臨床経験にもとづくものとされていますが、前術のようなエ
ネルギー論的考えに立った批判も多く、議論の的になってきました。
ところが昨年、Feinmanらは、糖質とタンパク質を比較した場合、タンパク質では摂取したエネル
ギーのうちより多くが熱になってしまう、すなわちエネルギー獲得効率が悪いことを示しました。
このことは、同じ総エネルギー摂取量でも、低糖質、高タンパク食の方が高いダイエット効果をも
つことを示唆しています。
実際、Mikkelsenらは12名の男性を対象に、身体のエネルギー消費量を正確に測る実験を行
い、同じカロリー摂取量でも、高タンパクダイエットの場合には平均約4%エネルギー消費が高く
なると報告しています。
高々4%ですが、1日当たり100 kcal程度に相当しますので、無視できない数字でしょう。

アトキンスダイエットは効果があった
アトキンスダイエットのような低糖質ダイエットが本当に効果的かという研究も相当数行われてき
ています。
その中で信頼性の高いものとして、Samahaら(2003)、Fosterら(2003)が、最も権威のある医
学誌"New England Journal of Medicine"に報告した研究が挙げられるでしょう。
これらの研究では、低糖質、高タンパクダイエットと、同カロリーでの低脂質ダイエットの効果を比
べ、前者の方が6ヶ月で約2倍の体脂肪減量効果があったとしています。
しかし、期間を1年間に延長すると、最終的に両者の間に差がなくなることも報告されています。

指摘される問題点
一方、何らかのデメリットはないのでしょうか。
一般に、特定の生理学的効果の高いダイエットやトレーニング法ほど、長所の裏返しとしての短
所を必然的にもつといえます。
指摘されている点をいくつか挙げると、昼間に眠気を誘発しやすい、痛風のリスクを高める可能
性がある、「機嫌が悪くなる」などです。
3番目については、糖質の低下が、心理的ムードを良くする脳内物質、セロトニンの分泌を下げる
ためと考えられています(女性はセロトニンの分泌が少なく、機嫌を保つのに甘いものが必要の
ようです)。
一般に、脳は糖質を主要なエネルギー源としていますので、極度の低糖質には注意する必要が
あるでしょう。
しかし、糖質の制限が一定の範囲内であれば、長期的に見て憂慮すべき副作用はないというの
が、米国生理学会の見解になっています。
一方、最近になって食品に含まれる「トランス脂質」が健康に重大な影響を及ぼすことがわかって
きました。
この点については次回に詳しくお話ししますが、やはり脂質を制限することも重要となるでしょう。
これまでの情報から総合的に判断すると、「短期的には低糖質」、「長期的には低脂質」がよいと
解釈しておくのが妥当と思われます。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース170号(2005年4月発行)より転載

合戸選手セミナー報告

合戸選手梅田セミナー.jpg

先日、ゴールドジム梅田大阪で合戸選手のトレーニングセミナーが行われました。
合戸選手に直接質問できるとあって、大変盛り上がったセミナーになりました。
たくさんのご参加ありがとうございました。

Kentai 江崎

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いちご狩り

いちご狩り.jpg

もうすぐ、いちごの美味しい季節がやってきます。
思い立ったが吉日で、早速いちご狩りに行ってきました。
とても美味しかったです。

Kentai 五反田

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合戸選手セミナー

合戸選手セミナー2.jpg

先日、ゴールドジムノース東京にて行われた、合戸選手セミナーです。
初心者から上級者まで、ひとり、ひとり、親切に教えてくれる合戸選手セミナーはいつも満員です。
参加してくれた皆さん、今年の大会、がんばってください。

Kentai 上野俊彦

【おすすめ】  カルシウムリッチホエイプロテイン3kg ココア味